《一言半句》 移民と避難民と難民 ー “鎖国”を解き、共生社会を

 「イミズスタン」。この言葉、以前からテレビやネット上で話題になっている。県西部の射水(イミズ)とパキ(スタン)を合わせた造語だ。射水市内で大勢のパキスタン人が生活する土地をパキスタン人自らがこう呼ぶそうだ。高岡市で住めば、「タカオカスタン」か。

 富山市から西へ国道8号線を車で30分ほど走ると、射水市に入る。道路沿いの所々に中古車販売業者の建物やパキスタン料理カレー店、広い敷地には中古車が所狭しと並ぶ。トヨタや日産、ホンダなど結構新しい車もある。伏木富山港は対岸貿易が盛んで、とりわけロシア(旧ソ連)向けの中古車輸出の拠点港だった。

 だが、ロシアの輸入規制で、ロシア向け中古車は全盛期のほぼ3割、事業者もロシア人に代わってパキスタン人が台頭し、射水市の国道8号線沿い一帯でコミュニティを築いた。今や県内はもとより、日本の中古車の向かう先は中東方面で拠点はドバイという。ここからアフリカなどへ移送されるらしい。アフリカは中古車販売市場として活況を呈しているという。

 かつて、パキスタン人と地元住民は生活、文化の違いからトラブルが絶えなかった。住民らが防犯パトロールや生活上の約束事について対話を重ね、公民館でパキスタン人が作ったカレーを食べるなど交流を深めている。ビジネスで来日したパキスタン人は市民権を得た移民で、もう20年以上も暮らす人もいる。イミズスタンには、「射水市民と共に、一緒に」という思いが込められているのだろう。

 パキスタン人に加え、ブラジル人やロシア人も多く、人口に占める外国人は今年1月時点で2,735人、人口に占める割合は2.98%、県内市町村で最も高い。新湊地区にはモスクのほか、住民と外国人との民間交流施設もある。

 パキスタン人に比べ、ロシアの軍事侵攻で日本にやってきたウクライナ人はどうなるのだろう。今や1,500人が入国、政府は自治体と協力し、受け入れている。定住や長期滞在を希望すれば、職業訓練や日本語実習を実施、滞在先を確保するとしている。ただ、政府の対応は難民ではなく、あくまで彼らを避難民と呼び、特例的に受け入れている。

 日本の難民条約の定義は「戦争や紛争から逃れた人は含まない」という立場である。避難民にこだわるのは滞在が一時的で、情勢が落ち着けば帰国してもらう、と考えているのだろう。欧米諸国や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は紛争から逃れた人も難民認定されるとしている。日本は〝難民鎖国〟なのだ。

 作家の五木寛之さんは朝鮮半島で日本の敗戦、終戦を迎え、38度線をさまよった。こうした体験を踏まえ、コロナが世界中を襲い、「これからは世界で紛争が頻発し、難民が世界中に散らばる時代が来る」と予言した。一方で今、ウクライナ人の境遇をマイナスと捉えず、たくましく生きてほしいとエールを送る。

 世界にはアフガニスタン、ミャンマー、シリアなど大勢の難民がいる。日本は鎖国を解き、難民に対し、寛容な国に変わるチャンスである。射水市をはじめ、富山県は積極的に受け入れたい。
                                                   (S)