【大学発ベンチャー設立状況調査】過去最多3,306社、増加数も最高を記録 最下位の富山県
経済産業省は、「イノベーションの担い手」として期待される大学発ベンチャーの現状を定点観測するとともに、今後の政策展開に活用するためその成長要因を分析した「令和3年度大学発ベンチャー実態等調査」(2021年10月時点)を公表した。調査は全国の大学、高等専門学校、TLO(技術移転機関)、都道府県庁、インキュベーション施設939件を対象に行われ、80.8%にあたる759件から得た回答をもとに算出した。
調査で存在が確認された大学発ベンチャーは3,306社。2020年度調査の2,905社から401社増加、過去最高の伸びを記録し、企業数、増加数とも過去最多となった。このうち、新規に設立された企業は200社、解散等は72社で昨年度の23社を上回った。

大学発ベンチャー数の推移
※企業数は当該調査年度時点で把握した数であり、前年度との差分は必ずしも新規設立数ではない
ちなみに米国における 2020年の大学発ベンチャー設立数は1,117社、2020 年末時点で活動している企業数は 6,567社で、2019年に比べていずれも増加しているが、米国の大学発ベンチャーの設立後5年の存続率は25.8%なのに対して、日本の大学発ベンチャーの存続率は95.9%ときわめて高い。
大学別の大学発ベンチャー企業数では、トップは引き続き東京大学で329社ともっとも多く、次いで京都大学の242社、3位は大阪大学180社、4位は筑波大学178社、5位は慶應義塾大学175社と続く。なかでも2020年度90社で10位だった慶應義塾大学がほぼ倍増したほか、岐阜大学が20社から57社に増えたのが目立つ。
都道府県別でみると、東京都が最多の1,118社、次いで大阪府242社、京都府207社。北陸地域では石川県が22社、福井県が13社と2桁なのに対して富山県は全国最下位の3社。富山県は2014年から最下位と低迷している。

都道府県別大学発ベンチャー数
業種別では「バイオ・ヘルスケア・医療機器」が最も多く、次いで「IT(アプリケーション、ソフトウエア)」だった。また従業員に占める博士人材の比率は、一般企業の研究職4%に対し、大学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する目的で新規に設立された「研究成果ベンチャー」は23%、既存事業を維持・発展させるため設立5年以内に大学から技術移転等を受けた「技術移転ベンチャー」は46%と特に高かった。大学発ベンチャーで博士人材が積極的に活用されていることがうかがえる。
一方、大学発ベンチャーの株式公開(IPO)やM&Aの状況としては、株式公開している企業は64社あり、時価総額合計は1.7兆円。ベンチャー設立から10年未満でのIPO数の割合は研究成果ベンチャーが37.5%に対し、その他ベンチャーは55%で、研究成果ベンチャーは設立からIPOまでに時間がかかる傾向にある。M&Aによる解散は2016年度以降22社が把握されている。