【若い研究者を育てる会】県内ものづくり企業の若手技術者が成果発表

 科学技術に対する強い探求心と豊かな創造力を持った県内企業の若手研究技術者を地元大学と富山県工業技術センター(現富山県産業技術研究開発センター)との共同研究形式で育てようと、1987年に発足した若い研究者を育てる会(会長・谷川正人コーセル社長)の研究成果発表会がこのほど開催された。

34年間で212テーマ、延べ389人の現場技術・研究者 

 同会は現在、上場企業を含む県内のものづくり企業12社で構成され、これまで212テーマの研究を実施。携わった研究者は延べ389人を数える。この間に特許出願は22件、うち7件で特許登録されている。

 実用化されている具体例として「工具寿命の機上検出手法に関する研究」(田中精密工業)が、クラッチドラムやアウトボードリテーナなどの量産ライン2基で、「容器用実用アルミ材の耐食性および腐食反応の解析に関する研究」(武内プレス工業)が、アルミ素材メーカーから購入する材料の選定方法に、それぞれ実用化されているという。

 34回目となる今回は6グループが研究成果を発表した。内容は次の通り。
①「基盤トランスにおける交流抵抗の低減技術検討」(発表者萩中悠太・コーセル)=情報関連機器等の小型化、高密度化の要求に対し、機器に内蔵するスイッチング電源のサイズや電力効率等を改善するために、電源の高周波駆動時におけるトランスでの損失の改善をシミュレーションとコイルの試作により検討した。

②「フッ素ガス表面処理によるガスケット高機能化の評価手法の研究」(同中山翔・タカギセイコー)=フッ素ガスと接触させることで表面をフッ素化する工法を用いて、アクリルゴムや ニトリルゴムといった汎用ゴム表面を高機能なフッ素ゴム化できないかについて検討した。

③「時系列データ分類のための誤分類低減手法」(同寺井太朗・田中精密工業)=現在運用されている加工振動などのデータに基づく異常検知システムをそのまま利用し、特定の条件での正常/異常の判別システムを改良することで正答率を向上させる方法を複数考案し、検証を行った。

④「熱伝導式水素センサの加熱冷却曲線のシミュレーション」(同中野貴之・北陸電気工業)=熱伝導式水素センサの温度履歴再現を目的に、熱伝導方程式による解析解導出、有限要素法による熱流体解析、および熱定数補正法を検討した。

⑤「製品のヘルスモニタリングのIoT 化に関する研究」(同西井渉太・コーセル)=人の手によって 1日1回確認している保存庫内の温湿度の管理業務を自動化すると同時に品質との関連を明らかにするため、無線ネットワークなどの IoT 技術を活用することで、温湿度データを遠隔地から高頻度で自動的に収集し、ひずみゲージを用いて接合部の変形データも同時に計測するヘルスモニタリングシステムを試作。

⑥「水の光分解に関する基礎研究」(同塚田成弘・燐化学工業)=水素の生成に向けて、光触媒材料としてオルトリン酸銀(Ag3PO4)に着目し、光触媒材料を電極として用い太陽光を利用した水分解の基礎的な研究に取り組み、光電極に新たな表面被覆を考案。