【キタムラ機械】米国現地法人の本社を拡張移転、FA化・無人化対応で需要急増 常設展示の大型ショールーム併設
国内唯一のマシングセンタ(MC)専業メーカーのキタムラ機械(本社高岡市、社長北村彰浩氏)は今年5月、米国イリノイ州シカゴにある現地法人Kitamura Machinery of U.S.A., Inc.(キタムラマシナリーオブUSA、KUSA)の本社を拡張移転する。ショールーム機能の拡充とユーザーへの製品提案力を高め、米国市場で「KITAMURA」ブランドの浸透と販売シェアのさらなる拡大を目指す。

米法人の新社屋(左)と全景(右)
移転先は現在の本社から近い工場団地にあり、オヘア国際空港まで約13キロと交通アクセスに恵まれた既存の建物を取得、リノベーションする。敷地面積は現在の約3.5倍の約14,000平方メートル、建屋は延べ約10,000平方メートルとなる。取得価格は非公表。これまで自社製品の展示は4、5台だったが、新本社にはほぼフルラインとなる40~50台を常設展示できる大型ショールームを設ける。
KUSAは1982年に100%子会社として設立。現在全米に30以上の直販代理店や技術サービス拠点をもち、北米・南米市場における製品販売や部品の供給、代理店のサポート業務などを行っている。新型コロナウイルス感染拡大により、リアルの大規模展示会の中止が相次いでいる中にあって、新社屋でのプライベート展示会を活用し、実機を見る・触れる・話す機会を増やすことで商談のあり方を進化させ顧客とのコミュニケーションを高める。
もともと同社は輸出戦略で業績を伸ばし、1980年代の日米貿易摩擦による苦境も乗り越えてきた。その結果、売り上げ全体の70%を輸出が占め、近年は80%にまで高まっている。輸出のうちの半分は米国向けだ。
一昨年から昨年前半にかけては米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で設備投資が抑制され、受注環境が低迷、売り上げ伸びは一時鈍化したものの、ここにきて人手不足が続く北米地区を中心にFA・自動化・無人化に対応する機械設備の需要が急速に高まっている。

SUPERCELL-300G
とくに好調なのは軍用航空機関連や建機業界、半導体関連、医療機器などの分野。機種は、1984年以来900セット以上の販売実績がある「SUPERCELLシリーズ」をはじめとする中型~大型MCなど。中でも「SUPERCELL-300G」は多品種少量生産を実現する長時間無人化対応のFMC(フレキシブル生産システム)として人気が高い。昨年4月には同シリーズの最上位機種800Gを上市した。
旺盛な需要増を追い風に、KUSAの売り上げは2022年3月期で約45億円に増える計画で、5月から稼働する新本社工場が本格的に寄与する23年3月期には52億円へ大幅増収を見込んでいる。
課題もある。キタムラ機械の連結売り上げは2021年3月期で約75億円。KUSAの好調な伸長が続けば日本国内の売り上げ比率は現在の20%をさらに下回る可能性が出てくる。従来の輸出偏重のスタイルから脱皮する戦略が求められる。
地球温暖化問題への対応としてEV(電気自動車)化が推進され、動力源がエンジンからモーターとなることで部品の数が少なくなる一方で、従来の部品製造の企業系列構造が変化し、技術力を持つ企業の新規参入が進むとみられる。同社はこれまで自動車分野への市場開拓が手薄だったが、米国、欧州だけでなく日本での市場を取り込む大きなチャンスであろう。