【スギノマシン】RI事業部新設、ロボットやAI活用しものづくり現場の課題解決
高圧洗浄機や金属切削装置などの産業機械メーカーのスギノマシン(本社魚津市、社長杉野良暁氏)は12月1日、ロボットやAI(人工知能)を活用した高付加価値商品やサービスの開発を拡充強化するための専門部署となるRI事業部(Innovation with Robotics and IoT/ICT/AI事業部)を設立した。部署は設計部門を中心に早月事業所(滑川市栗山)内に置き、事業部長に大西武夫同社執行役員(工学博士) が就いた。

ロボットを軸にハードとソフトの両面から各工程をコンパクトかつ柔軟につなぐ
機械製造の現場においてデジタル技術の急速な進化とともに設備と設備、設備と人が繋がり、リアルタイムに情報共有できるようになる一方、労働人口の減少やコロナ禍を受けて働き方が大きく変化する中、製造ラインのロボット化が加速化している。さらに、AIで設備やロボット自身が最適な判断を行い、自律的に動くことが求められるなど、より高い生産システムへの動きも急速に進むとされる。
RI事業部は、ユーザーのものづくり現場における人手不足などの課題解決に向けたコンサルティングサービスも備え、競争力強化につながる顧客価値の創出を目指す。
具体的には、自社開発した「スイングアーム式コラムロボット(CRb)」をはじめとする装置に故障の予兆検知機能や動作の最適化機能を搭載し、付加価値の向上を図る。CRbは、機械設備間の狭い空間に設置し、ワークの搬送や脱着・加工作業を行うことができる独自構造のコンパクトの多関節ロボット。2016年に開発して以来、防水対応や可搬質量のアップを重ね、IoT遠隔監視、故障診断機能、アラーム通知、消耗部品管理機能によるコンディション診断などを実装した新ラインを提案するため順次ラインアップの拡充を進めてきた。

ウォータージェット作業専用クローラ式小型ロボット
10月にはウォータージェットポンプ向けのIoT遠隔監視機能を発売。さらに多関節アームにウォータージェットガンを持たせ、無線遠隔操作が可能なウォータージェット作業専用クローラ式小型ロボットを11月に発表し、2022年4月に国内向けに発売する予定だ。
同社は1936年の空気圧、水圧チューブクリーナ専業メーカーとして創業、その後機械加工やバリ取り、高圧洗浄の各工程から搬送ロボット、近年は乾式微粒化装置にも参入。その全てを自社で製造・販売し、アフターサービスまでの社内一貫体制をもつメーカーは、世界でも同社のみという強みをもつ。今後、CRbを軸としてさらにツールのセッティング、管理装置や自動搬送台車、生産管理システムとも連携させ、ハードとソフトの両面から各工程をよりコンパクトで柔軟につなぐ⼀貫システムの開発を進めていく。
独に現地法人設立 微粒化装置の販路拡大へ

ドイツ現地法人が入居するビル
同社のコア技術のひとつであるウォータージェット技術による湿式微粒化装置「スターバースト」の販路拡大を図るため、12月1日、独・ヘッセン州エシュボルン市に現地法人Sugino Europe GmbH(スギノヨーロッパ・社長日光久倫氏)を設立し、営業を開始した。これに伴い、2005年に開設し自動車製造向け工作機械を主に販売してきたプラハ支店は閉鎖した。
扱い主力商品は、超高圧微粒化技術を生かし、最高245MPaに加圧した原料同士を斜向衝突させることでナノレベルに繊維をほぐし、ナノファイバーを作り出す装置。セルロースや生物資源由来のナノファイバー材料の開発を行い、機能性素材、複合材料として食品、化粧品、医薬品、電子部品などさまざまな分野で実用化を進め、海外市場展開も視野に置いてきた。
ドイツでは電池や半導体の素材を手掛けるメーカーが多いものの、ナノサイズの材料開発がほとんど普及していないという。5G(次世代通信規格)の高速ネットワーク化による基地局や電気自動車の普及とともに、複合材料として市場開拓の余地が大きく、欧州における販売とメンテナンスの拠点とする。
またシュツットガルトのフラウンホーファー・生産技術・オートメーション研究所(IPA)に湿式粉砕・分散装置の共同実験室を設置し、先端材料の開発に関する共同研究を始める。IPAは欧州最大の科学技術分野における応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構の中でも、最も大きな研究所の一つで、1959年に設立され製造業に関連する組織的・技術的問題を中心に研究開発を行っている。従業員は約1,000人。