【ウッドデザイン賞2021】県内から6点、木材の魅力を活かした空間、機能性と美を両立した木製品など受賞
木の良さや価値を再発見させる製品や取り組みについて、特にすぐれたものを消費者目線で評価し顕彰する「ウッドデザイン賞2021」(林野庁補助事業)の受賞作品に富山県内から6点が選ばれた。
募集分野は木を多用した住宅や建築、それを形にする木質建材や工法、店舗、施設、家具、インテリア、雑貨など形あるものだけでなく、木材製品や材を供給する山や森の思いや物語を社会にメッセージするコミュニケーション活動、木材の利活用を促すワークショップやビジネスモデル、技術、研究、調査なども含まれる。
7回目となる今回は昨年を上回る433点の応募の中から、木材の魅力を活かした空間、機能性と美を両立した木製品など191点が選出された。木を使って暮らしの質を高める「ライフスタイルデザイン」、人の心を豊かにし身体を健やかにする「ハートフルデザイン」 、地域や社会を活性化している「ソーシャルデザイン」の3つの表彰部門がある。
審査委員会は委員長にプロジェクトデザイナー・科学技術ジャーナリストの赤池学氏、委員には建築家の隈研吾氏、プロダクトデザイナーの益田文和氏、コミュニティーデザイナーの山崎亮氏、慶應義塾大学理工学部教授の伊香賀俊治氏ほか各分野の第一線で活躍する気鋭の有識者が務めている。
受賞した191点の中からさらに最終審査が行われ、最優秀賞(農林水産大臣賞)1点、優秀賞(林野庁長官賞)数点、奨励賞(審査委員長賞)数点が11月24日に発表される。受賞作品展示は12月8~10日に東京ビッグサイトで開催される「エコプロ2021」内の「ウッドデザイン賞特設コーナー」で行われる。
受賞作品はウッドデザインマークの使用が認められるほか、さまざまな広報・PRの場が提供され、生産から消費に関わる人のマッチングが進められる。
富山県内から選ばれたのは、①ライフスタイルデザイン部門からタニハタ(富山市、社長谷端信夫氏)の組子「麻の葉ちらし」シリーズ、美術木箱うらた(高岡市、社長浦田健志氏)の「KIRIFTストッカーシリーズ」、②ハートフルデザイン部門から東畑建築事務所名古屋オフィスが手掛けた「魚津市立星の杜小学校」、辻四郎ギター工房(南砺市、代表辻四郎氏)の「クリプトメリアシリーズ ウクレレ」、③ソーシャルデザイン部門から三上建築事務所(東京、社長益子一彦氏)設計による「砺波市立図書館」、岸田木材(氷見市、社長岸田毅氏)の「モリまちスタンドin考えるパンKOPPE」の6点。
タニハタ = 組子「麻の葉ちらし」シリーズ
組子は、釘を使わずに木を幾何学的な文様に組み付ける日本古来の伝統木工技術。「麻の葉ちらし」シリーズは、春夏秋冬、花鳥風月にみる日本の美と自然をテーマに、天然木の色の違いと伝統的な麻の葉文様のバリエーションを散りばめ、日本人の感性を表現したオリジナルのインテリア組子シリーズ。
美術木箱うらた = KIRIFTストッカーシリーズ
調湿効果が高く防腐、防虫、耐朽性にも優れる桐のライフストッカー。桐の原木は数年雨ざらしにしてアク抜き(渋抜き)と乾燥を行うが、輸入されている中国桐はその工程を省き、桐材表面の色の劣化を防ぐ漂白剤が使われているのがほとんどいわれる。同社は安全と健康面で国産桐にこだわり、2020年に新しくキッチン・インテリア雑貨をメインに扱うブランド「KIRIFT」を立ち上げた。受賞作品はブランド初のシリーズ商品。
東畑建築事務所 = 魚津市立星の杜小学校
2015年の建築基準法改正を踏まえ、2019年4月に開校した全国初の準耐火建築物の木造3階建て小学校。20年度の木材利用優良施設コンクールで国土交通大臣賞受賞。構造材、仕上げ材から下地材まで魚津地域で調達可能なヒノキ、スギ等の樹種を使い、多雪地ならではの積雪荷重にも配慮している。壁などに延焼防止措置を講じることで90分耐火構造とした。木がもつ香り、あたたかみ、感触や調湿性といった優れた性能を活かした校舎は、木育の教材として相乗効果を生み出している。
辻四郎ギター工房 = クリプトメリアシリーズ ウクレレ
弦楽器の材料であるマホガニーやローズウッドなどがワシントン条約の規制対象となったことに対応し、富山県木材研究所が開発した木材の圧縮加工技術と人工杢目(もくめ)付与技術を活用してスギ高密度材を開発。県総合デザインセンター、地元のA-PLUSデザイン事務所、県立大学との産学連携によりオリジナルデザインのウクレレを商品化した。サイドのナラ材、ネックのヤマザクラ材も富山県産。高岡漆器(螺鈿細工)、高岡銅器(杢目金)の伝統技術を表面装飾として用い、材料から装飾まで「Made in TOYAMA」。
三上建築事務所 = 砺波市立砺波図書館
2020年11月、国道156号線沿いにリニューアルオープンした図書館。「あずまだち」と呼ばれる砺波地方の母屋の佇まいをベースにした78メートルの大屋根がランドマークとなっている富山県初のワンルーム図書館。大屋根の下は大きなカーブを描いた木の天井となっていて、木の温もりと高窓から注ぐ柔らかな自然の光に包まれている。環境に配慮し冷暖房に地中熱を活用しているのも特徴。2021年7月、中国の建築サイトが主催する国際設計グローバルデザインコンクールで銀賞受賞。
岸田木材 = 木材の無人販売所「モリまちスタンドin考えるパンKOPPE」
同社は、地元氷見に約140年続く木材の老舗。近年のCO₂排出量の削減への取り組みと、資源循環の構築、森林整備、木材の地産地消を図るため、植樹や伐採体験、ひみ里山杉を使ったモノやその端材の有効活用などさまざまな活動を通じた地域づくりを行っている。無人販売所もその一環で、氷見市中央町商店街の空きテナントをリノベーションし、2020年に開業したパン屋の店先にあり、年中無休営業している。