【特許行政年次報告書】特許出願件数における中小企業比率は過去最高の17.5% 知財活動に地域格差
特許庁がまとめた「特許行政年次報告書2021年版」によると、2020年の特許出願件数は前年比6.3%減の288,472件となった。出願件数は減少傾向が続いており、これまで30万件を超える水準で推移してきたが、コロナ禍の2020年は減少幅が拡大している。

特許出願件数の推移

PCT国際出願件数の推移
一方、特許庁を受理官庁とした特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数は2019年まで増加傾向を示しており、2020年は前年比4.5%減の49,314件となったものの、依然として高い水準を維持している。研究開発や企業活動のグローバル化が進展し、国内のみならず国外での知財戦略の重要性が増していることが背景にあるとみられる。
実用新案登録出願件数は近年減少傾向にあったが、2020年は新型コロナウイルス感染症対策としてマスク等の技術が活発に考案されたこともあり、前年比15%増の6,018件となった。意匠登録出願件数は前年比0.8%増の31,752件、商標登録出願件数は同5.1%減の181,072件であった。
中小・ベンチャー企業の出願は増加傾向
中小・ベンチャー企業の出願は、特許、実用新案、意匠登録のいずれも前年より増加している。スタートアップへの支援施策、中小企業に対する外国出願支援、中小企業向けの特許料・審査請求料の減免制度や手続きの簡素化などが後押ししたとみられる。

中小企業の特許出願件数の推移
中小企業における特許出願件数は前年比0.5%増の39,789件となり、内国人出願における中小企業の出願件数比率も前年より1.4ポイント上昇して過去最高の17.5%となった。 PCT国際出願件数は前年比6.9%増の5,072件となり、中小企業の出願件数比率は10.4%に上昇した。
中小企業における実用新案登録出願件数は2,398件(前年比27.0%増)、内国人出願における中小企業の出願件数比率は54.8%であった。また、意匠登録出願件数は9,192件(前年比6.0%増)、中小企業の出願件数比率は41.0%に上昇した。一方、商標登録出願件数は83,007件(前年比12.2%減)、中小企業の出願件数比率は61.3%と、いずれも減少に転じた。
中小企業の知財活動に地域格差
中小企業の知財活動を都道府県別にみると地域格差が浮き彫りになる。中小企業数に対する特許出願中小企業数の割合は2020年で全国平均0.33%であるが、これを上回るのは東京、神奈川、福井、愛知、京都、大阪の6都府県のみで、中でも東京が突出している。

都道府県別の中小企業数に対する特許出願中小企業数の割合

都道府県別の中小企業数に対する実用新案登録出願中小企業数の割合
中小企業数に対する実用新案登録出願中小企業数の割合は全国平均0.05%であり、全国平均を上回るのは埼玉、東京、福井、山梨、岐阜、愛知、滋賀、京都、大阪、兵庫、 奈良、香川の12都府県である。
中小企業数に対する意匠登録出願中小企業数の割合は全国平均0.10%で、全国平均を上回るのは東京、新潟、岐阜、愛知、大阪、兵庫、奈良、岡山、香川の9都府県となっている。
人口・経済規模が比較的近似した北陸3県にあって、福井県の知財活動が活発であることがみてとれる。
富山県の出願件数、商標登録が特許を上回る
富山県における出願件数は下表のとおり。
特許、意匠登録の出願件数は順調に増加しているが、実用新案、商標登録の出願件数は前年を下回った。国際出願(PCT国際出願)件数は2017年の62件から減少傾向にある。
四法別の出願件数をみると、全国では特許出願件数が全体の6割程度を占めているのに対し、富山県では商標登録出願件数が特許出願件数を上回っており、特許出願件数の比率は約4割にとどまっている。