【スギノマシン】早月事業所に新工場・微粒テストセンター完成 電子部品・医薬品向け微粒化装置とナノファイバー素材に注力
産業機械・工作機械メーカーのスギノマシン(本社魚津市、社長杉野良暁氏)が滑川市の早月事業所内で建設を進めてきた新工場・微粒テストセンターが5月25日に竣工し、稼働を開始した。
電子部品や医薬品の素材分野を中心とした需要増に対応し、新工場では超高圧微粒子化技術を生かした装置の製造およびテスト体制を増強するとともに、微粒化装置を生かしたバイオマスナノファイバー材料の開発と製造などを行う。

湿式微粒化装置の大型機を設置した実験室
鉄骨造り一部2階建て、延べ床面積は2,732㎡。技術研究棟と組み立て工場、クリーンルームを備えた材料の製造室、テストセンターを併設・一体化することにより、ユーザーへの迅速な対応と装置の増産態勢を整える。従来1日1件程度だったユーザーからのテスト依頼は、新工場稼働により1日4件とこなせる数も大幅に増える。投資額は約15億円。新工場の建設により1.5 倍の売り上げ増加を見込む。
同社はコア技術であるウォータージェット技術の応用分野として、10年以上前からセルロースをはじめとする生物資源由来のナノファイバーに着目、湿式微粒化装置「スターバースト」の開発と素材開発、受託製造を進めてきた。パルプ化した原料を水に分散させ、最高245MPaに加圧した原料同士を斜向衝突させることでナノレベルに繊維をほぐし、ナノファイバーを作り出す。水と原料だけで製造するため、人と環境に優しく、不純物の混入が極めて少ないのが特長だ。

「BiNFi-s」のトライアルセット
同社が開発・製造したナノファイバー素材は「BiNFi-s (ビンフィス)」の商品名で展開している。BiNFi-s には、セルロースのほか、カニやエビなど甲殻類の殻の主成分であるキチン・キトサン、CMC(カルボキシメチルセルロース)、シルクといった幅広いタイプを取り揃える。いずれも地球上に多く存在する天然の高分子で環境負荷の少ない持続型資源であり、さまざまな特性をもつ新素材として注目されている。
セルロースナノファイバー(CNF)は鋼鉄の1/5の軽さで5倍の強度、熱による膨張が小さいなど、優れた特性をもつ。高強度の紙や食品包装フィルム・容器、音響機器、さらには食品、化粧品、医薬品、電子部品など複合材料への応用や機能性素材としてさまざまな分野で実用化と研究が進められている。キチン・キトサンはCNFと同様の構造と特長をもちつつ、生体適合性が高いことから医療・医薬業界ではCNF以上に期待されている。

右手の部屋で製造されたCNF素材は製造室で粉末化される。
新工場の稼働で同社が当面のターゲットとする領域は、電子部品用セラミックスや電池の材料、地元富山に産業集積している医薬品などだ。
杉野良暁社長は「自動車や産業機器の高速ネットワーク化、セキュリティといったさまざまな分野で産業構造に変化を起こすとされる5Gが登場し、通信関係の投資は今後大きく伸びる。電子部品や電池材料の開発も活発化が予想され、超高圧微粒子化技術を生かしたノウハウで新たな市場開拓を進めたい」とし、新工場の稼働は環境配慮型の商品をつくるための原料をものづくりの立場で提供できる絶好の機会ととらえる。
さらに、ナノサイズの材料開発がほとんど普及していない欧州への進出も視野に入れ、一両年にはそのためのパートナー選定と拠点設置を進め、海外でも超高圧微粒子化技術による新しい市場の創出に挑戦していく計画だ。
同社はナノファイバーの用途開発に関する研究結果を技術資料(テクニカルレポート)してまとめているが、6月15日からこれまでのWebセミナーのアーカイブ動画と、新たに開発したCNFの塗料への活用に関する技術情報を自社サイトで公開した。またユーザーの商品化への支援として、「ナノファイバーなんでも技術相談室」を設け、問い合わせフォーム送信後1時間以内に連絡するサービスも行っている。