【資産継承に関する実態調査・富山県】相続した現預金は預貯金へ 過半数が親の意向把握せず

 50〜60代の退職前後世代がどのように親の資産を承継しているのか、MUFG資産形成研究所は実態調査を実施し、都道府県別のレポートをまとめた。

 調査は昨年3月、リサーチ会社を利用したWEBアンケートにより実施。50代・60代の相続経験者で、総務省全国消費実態調査の都道府県別1世帯当たり家計資産額以上の保有者を対象としており、有効回答者数は5,838サンプル。富山県は家計調査基準3,400万円以上、サンプル数は52である。

親から相続した現預金の「預貯金への預け入れ」全国2位

 親(亡くなられた人)の財産額は全体の平均値が6,140万円、中央値が3,450万円であるのに対し、富山県は平均値3,989万円、中央値2,500万円。親から自身が相続した財産額は全体の平均値が3,273万円、中央値が1,600万円で、富山県は平均値1,920万円、中央値950万円となっており、いずれも全国平均を下回る。

 親の財産額の内訳をみると、「現金・預貯金」の占める割合が55.3%で、全国2位の高さである。親から自身が相続した財産額でも「現金・預貯金」が48.6%を占め、全国5位の上位に位置する。相続した現預金の使途については、「預貯金への預け入れ」が74.6%で全国2位となっている。

親から相続した現預金の使途

 相続した財産のうち有価証券(株式・債券・投資信託)等の金融商品は14.2%、不動産(土地・建物)は47.8%を占める。相続した株式を換金せず保有する人が64.3%おり、そのうち55.6%が「長期に保有したい」と答えている。相続不動産については、「自身が居住」31.6%、「兄弟姉妹が居住」12.3%で、その他の人が居住するケースを含め「居住」が80.6%を占めており、全国平均より高い。

相続した不動産の活用方法

 親から相続した現預金の預け先は「自身のみが利用していた金融機関」が54.2%で、半数以上を占める。その金融機関を選択した理由では「相続が発生する以前に自身との接点があったため」が最も多いが、「インターネットやアプリによるサービスが充実しているため」とする回答が富山県は12.4%で、全国2位となっている。

親の住まいまでの移動時間「6時間以上」全国1位

 親子間の移動距離と居住地に関する調査では富山県の特徴が顕著に表れている。
 親の住まいまでのおおよその移動時間が「6時間以上」と回答した人が富山県は34.7%を占め、全国トップである。「親と同居していた」(32.0%)、「30分未満」(16.2%)の回答は全国平均を下回る。

親の住まいまでのおおよその移動時間

 親が富山県に居住する子の居住地は、「中部地方」(54.2%)が最も多く、ほとんど(96.4%)が富山県在住である。次いで「関東地方」(36.2%)、「東北地方」(6.7%)となっており、「近畿地方」は少ない。県外に居住する子は関東地方などに離れて暮らす傾向がみられる。

Uターンについての経験や意向

 Uターンについての経験や意向を尋ねたところ、富山県は「Uターンしたことがある」が27.3%、「今後したいと思っている」は3.7%にとどまり、いずれも全国平均を大きく下回る。一方、「Uターンする先はあるが、Uターンしたくない」33.1%、「 Uターンする先がない」35.9%と、約7割がUターンの意向を示していない。Uターンした理由では「地元が好きでUターンした」(48.7%)が半数近くを占め、次いで「土地・家屋を継ぐためにUターンした」(25.7%)が多い。

 親子のコミュニケーション頻度では、「週に2~3回以上」(30.1%)の回答は全国下位2位で、「会っていない/使用していない」(3.7%)が全国平均を上回る。コミュニケーション不足により、親の財産管理に関する意向を「把握できていた」(17.7%)が全国下位2位となり、「あまり把握できていなかった」(28.3%)、「把握できていなかった」(24.6%)の回答が半数を上回る結果となった。

デジタルサービスの利用は低調

 金融機関での取引に付随して有料サービスを「利用したい(したかった)」は20.1%で全国下位2位となり、「金融機関ではどれも利用したいと思わない」が60.6%を占めている。退職金の運用について金融機関等に「相談した(相談したい)」は73.2%で全国2位、相談した(したい)金融機関は「地方銀行・第二地方銀行」が50.0%を占め、全国平均を大きく上回る。

 退職金の使途では「預貯金への預け入れ」が66.3%で預貯金指向が強いが、「投資性商品(株式・投資信託等)の購入」との回答が14.6%あり、全国4位となっている。

 現在利用しているお金に関するデジタルサービスについては、「電子マネー」が53.8%にとどまり、全国下位5位となっている。「インターネットバンキング」(57.7%)、「スマホ決済」(34.6%)も全国平均を下回り、デジタルサービスの利用は低調である。

出典:
退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査~全国47都道府県レポート【富山県の特徴】