《一言半句》「ワンチーム」になれるか―富山市長選・市議選を終えて
4年に1度の富山市長選と市議選が終わった。富山市政を展望し、少し前もてはやされたワンチームという言葉が脳裏をよぎった。平成の市町村合併前にスタートした森雅志市政が終わり、藤井裕久新市長が誕生した。前回の市議選は政務活動費不正事件の只中だった。そのわずか5カ月前には議員のドミノ辞職に伴い、補欠選挙が実施された。傷ついた議会は今も尾を引く。議会改革を掲げて前回当選した面々に新顔が加わった。人口減少時代を切り拓くべく市政に期待はすれども、なぜかワクワク感がない。
ラグビーのワールドカップ杯で日本チームのワンチームが賞賛された。先の富山県知事選で新田八朗氏は「ワンチームで富山を変えよう」と現職に挑み、当選した。評価はまだ先である。森市政の評価は様々だろうが、富山国体に向け、遅れていたハードの整備に尽くした正橋市政から、環境を意識した街づくりに転換したことだ。
その象徴は、廃線の憂き目にあった富山港線をライトレールで甦らせたことだろう。市職員は賛同を得るため、沿線企業などに必死に出資を求め、歩いた。スタート時は10年間赤字を覚悟していたが、早々に黒字転換した。全国発信し、富山市の観光代名詞にもなり、その延長線上にコンパクトシティーがあった。
森市長と石井知事が時々、政策でぶつかった。政治の世界では「仲が悪い」と揶揄された。が、森氏は県議から市長選出馬に際し、職員の意識改革とスピード感のある政策の実現を語っていた。公言どおり、改革に努め、一定のワンチームを形成したようにも見える。市職員にも「県庁に負けられない」と、上下ではなく、対等意識が醸成されていた。住民に最も近い、基礎自治体の首長と職員の自負だろうか。
藤井新市長のワンチームづくりにも注目するが、新議会はワンチームになれるのか気掛かりだ。むろん、市長と議会が仲良くという意味合いではない。地方自治体は首長・行政機関と議会・議事機関という二つの権力が相対する二元代表制。国政の議員内閣制、政党政治とはシステムが異なり、地方議会は行政の監視、議決権と政策提案機能を持つ。
市民とスクラムを組み、議員提出条例や政策実現が王道である。そこに森市政が見逃した分野もあるはずだ。2016年に発覚した政活費不正事件以降、議会内は政策論議とは程遠く、いがみ合いばかり目立った。コロナ禍の今こそ「ワンチーム」に向け、市長と対峙したい。
(S)