【キタムラ機械 】5G搭載の次世代機、NTTドコモと共同開発へ ARスマートグラスで保守業務も効率化

 マシニングセンタ(MC)専業メーカーのキタムラ機械(本社高岡市、社長北村彰浩氏、資本金3億8,000万円)はNTTドコモと共同で、次世代通信技術5Gを使って遠隔から全自動で穴あけ・削り・ねじ立て等様々な加工ができる制御機能「Auto-Part-Producer 5G」を開発する。

 5Gは、既存の4Gの約20倍の通信速度と、複数の機器を同時につなげられる高速大容量・低遅延・多接続性を特徴とする。NASA基準の清浄度をもつ工場を5Gエリア化し、3月23日に共同開発拠点「KITAMURA Innovation Factory」(KIF、写真)を開設した。

共同開発拠点となるKITAMURA Innovation Factory

 担い手不足が深刻化し、工作機械操作が複雑化するものづくりにおいて、5Gを活用した工作機械の制御機能を開発するのは国内初の試みで、2022年8月にかけて技術検証、機械の設計・開発を行い、2023年4月の次世代工作機械の商品化を目指す。

 同社は2008年、経験や知識を必要とせず、誰もが簡単に高精度・複雑切削加工ができるコンピュータ数値制御(CNC)装置「Arumatik-Mi」を業界に先駆けて独自開発し、同機能を搭載したMCを世界市場で販売。その後も高解像度CCDカメラ、マイク、スピーカーの標準搭載、個人認証機能など「Arumatik-Mi」のバージョンアップを重ね、「スマートフォンを操作するように簡単に切削加工を行える」(北村彰浩社長)加工操作の簡易化と最先端化に対応してきた。

 従来はプログラム言語を習得した熟練者が専用の加工プログラムを作成してMCに搭載する必要があったが、2018年に世界で初めて工作機械を自動運転する機能「Auto-Part-Producer」(特許)を開発、人工知能(AI)が3D モデルを基に加工に必要な各種条件を自動決定し、直接加工まで行えるようにした。発売以来、幅広い分野から引き合いを受け、同機能を搭載したCNC装置の累計納入実績は4,000台に達する。

 同社の得意領域とする自動車や航空機、医療機器部品などの切削加工は複雑化し、高精度化要求も高い。近年は部品の複雑化に伴い3Dデータも大容量化していることから、高性能なデータ処理機能を工作機械一台一台に搭載する必要があり、依然として作業者は機械側での操作が求められていた。 

 今回共同開発する「Auto-Part-Producer 5G」は、データ処理をクラウド上で行いながら、そのデータを5Gでリアルタイムに工作機械に伝送、遠隔からの操作や、複数のMCの制御を一人で行えるようにする。工作機械本体にデータ処理機能を搭載する必要がなくなるため、導入価格を従来より約3割減らせるという。

 またウェアラブル端末のARスマートグラスを使い、リアルタイムの映像を見ながら熟練技術者が遠隔から現場の作業員にMC設備の保守やメンテナンスの指示や助言など保守作業を支援する遠隔保守も可能となり、工作機械の不稼働時間の短縮や保守業務にかかる費用の削減にも役立つ。

ARスマートグラスで保守業務を効率化

  KIFでは「Auto-Part-Producer 5G」の開発だけでなく、人と技術の伝承が求められるものづくりの分野で、デジタル技術やAIの活用を通じたデジタル・トランスフォーメーションについても共同で取り組む計画だ。

 同社は欧米を中心に世界52カ国の自動車、航空機、光学機器、医療機器などの先端産業を中心とした生産設備として35,000台以上の納入実績をもつ。特許取得400件以上、従業員数は国内221名、米・独を含むグループ250名。