【2019年医薬品生産金額】腫瘍用薬が90%増、都道府県別1位は埼玉県、富山県は4位に

 厚生労働省はこのほど、新しい調査方法による2019年薬事工業生産動態統計年報を公表した。

 以前の調査では、医薬品、医薬部外品、医療機器・再生医療等製品の製造業の許可または登録を受けて製造する製造業者も調査客体としていたが、2019年1月分以降は製造業者を除外して製造販売業者のみとした。また、従来の都道府県経由の調査を廃止し、原則オンライン報告とした。

 これまで本社および工場の全数を調査対象にしていたが、医薬品の製造販売業許可をもつ本社において全量把握が可能であることから、調査対象は本社のみとした。これにより調査の効率化、報告者の負担軽減を図り、迅速に高精度の調査結果を公表するのが狙いである。

 2019年の医薬品最終製品の生産金額(国内)は9兆4,860億円で、前年比で2兆5,783億円増(37.3%増)となった。3年連続の増加であるが、2017年の1.5%増、2018年の2.8%増に比べて大幅増となったのは、調査方法の変更により回収率が向上したためとみられる。

 用途区分別に見ると、 医療用医薬品は8兆6,628億円で40.3%増加、要指導医薬品・一般用医薬品は8,232億円で12.0%の増加となった。医療用医薬品が全体の91.3%を占め、前年から1.9ポイント増加している。

医薬品主要薬効大分類別生産金額
出典:令和元年薬事工業生産動態統計年報の概要

 薬効大分類別に見ると「腫瘍用薬」が対前年比90.0%増の1兆1,617億円で最多となった。優れた効能・効果を持つ高額の腫瘍用薬の開発・使用が進んでいる状況を反映するもので、医薬品全体に占めるシェアも前年の8.9%から12.2%に伸びている。

 2位の「その他代謝性医薬品」1兆1,554億円(対前年比34.6%増)、3位の「中枢神経系用薬」1兆1,225億円(同43.0%増)を含め、上位3分類はいずれも1兆円超えで、生産金額も増加している。このほか「ホルモン剤」(同66.7%増)、「アレルギー用薬」(同57.9%増)、「その他治療を主目的としない医薬品」(同61.3%増)なども生産額が大きく伸びている。

調査方法変更で都道府県順位は大きく変動

 新調査では製造販売業者のみを調査客体としたことにともない、製造販売業者が委託先の製造業者情報も含めて報告し、生産金額はすべて製造業者が所在する都道府県に計上することになった。これにより、都道府県別の生産金額は旧調査に比べ大幅に増減が生じている。

都道府県別医薬品生産金額トップ10

 生産金額トップは埼玉県の9,016億円で、対前年比で160.9%増、構成割合も前年の5.0%から9.5%にはねあがった。以下、栃木県8,638億円(対前年比84.8%増)、静岡県8,382億円(同24.7%増)、富山県6,937億円(同11.1%増)、滋賀県5,449億円(同166.5%増)と続く。

 調査方法変更により順位が大きく上がったのは埼玉県(6位→1位)、滋賀県(11位→5位)、山口県(13位→7位)、群馬県(30位→17位)、京都府(27位→20位)、山梨県(26位→21位)、奈良県(32位→27位)など。栃木県(4位→2位)、兵庫県(8位→6位)、徳島県(10位→9位)なども順位を上げた。

 富山県の医薬品生産金額は過去最高の6,937億円となったが、順位は前年の2位から4位に下がった。前年トップだった静岡県は3位となった。両県とも生産金額は増加しているが、他の上位県の急増には追いつかなかった。

 大阪府は生産拠点のある他県に生産金額が計上された結果、27.4%減となり、順位は前年の3位から11位に落とした。東京都は生産金額が77.0%減となり、順位は5位から26位へ急落した。