【富山大、県衛生研究所などの研究グループ】新型コロナウイルスの中和抗体の評価法を確立 国内初、採取した血液から直接検査

 富山大学学術研究部医学系微生物学講座・感染症学講座・免疫学講座、富山県衛生研究所ウイルス部、国立感染症研究所の研究グループ(代表:森永芳智富山大学学術研究部医学系微生物学講座教授)は、新型コロナウイルス感染症への免疫獲得状況を知る中和抗体の評価法を確立し、採取した血液から直接検査する方法を国内で初めて開発した。

 中和抗体はウイルスに感染したり、ワクチンを接種した場合に獲得されるもので、ウイルス感染を阻害する能力をもつ。体内に新型コロナウイルスの中和抗体が確認されれば再感染する可能性は低いが、中和抗体を検出するには特殊な実験室の中で生きたウイルスを扱う必要があり、これに代わる安全かつ迅速な検査法の開発が求められている。

シュードタイプウイルス

 同グループは、谷英樹県衛生研究所ウイルス部長が長年取り組んできた技術を用い、外側の殻は新型コロナウイルスだが、内側は異なるウイルスというシュードタイプウイルス(偽型ウイルス)を作り出すことに成功。新型コロナウイルスとは違って一般的な研究室で取り扱うことができ、このウイルスを使って感染患者の血液中の中和抗体を評価する方法の開発に取り組んだ。

 2020年4月以降、富山大学附属病院総合感染症センターの患者の協力を得て、発症した人が中和抗体を有することを確認した。また、国内で初めて全血(細胞成分を除かない状態の血液)でも評価した。血液内の細胞成分を分離する作業が不要になるため微量の血液でも検査が可能で、患者1人あたりの検査時間も従来より10分ほど短縮されるという。

 研究成果は、集団免疫の評価や、これから出てくるワクチンの有効性評価にもつながるもので、引き続き評価法の改良に取り組む予定。この研究は日本医療研究開発機構(AMED)のウイルス等感染症対策技術開発事業に採択されており、 研究成果は学術誌「Virology Journal」に掲載されている。