【アムノス】韓国食品医薬品安全処から乾燥羊膜の輸入承認を取得 輸出販売へ道拓く

 富山大学発のベンチャー企業で、ヒト由来の乾燥羊膜「ハイパードライ羊膜」の事業化を進めているアムノス(本社下新川郡朝日町、社長田中淳氏)はこのほど、韓国の国家行政機関である韓国食品医薬品安全処から同社製品の輸入承認を取得した。これで韓国の医療機関などに対し、ハイパードライ羊膜を輸出販売していく次のステップに進めることになった。

アムノスのハイパードライ羊膜

 羊膜は妊婦の子宮内で胎児を包んでいる薄い膜で、タンパク質で構成される。組織再生や角膜障害、その他の治療用途に使用されるほか、創傷被覆材などの再生医療の細胞源として注目を集め冷凍生羊膜として一部で提供されていたが、医療現場で活用するためには高額で大きな冷凍保存設備が必要で、通常は出産の後、胎盤とともに医療廃棄物として捨てられていた。

 これに注目した富山大学の二階堂敏雄教授の研究グルーブは、採取した生の羊膜を赤外線とマイクロ波を使った特殊技術で乾燥させる独自技術を開発し、羊膜の機能を維持したまま常温で約2年間の長期保存が可能なハイパードライ羊膜の作製に成功。マイナス80℃という特別な冷凍保存の必要がなく、γ線滅菌処理により感染や癒着リスクが著しく軽減された。羊膜本来の薄さ・透明性をもち、現場での裁断が可能なため複雑な形状にも対応でき、手術時間の短縮が望めるなど、きわめて安全な再生医療材料として2012年に日本、2013年に米国で乾燥羊膜の製造などに関する特許を取得した。

 2014年、創業者がともに富山県出身の地縁をもつコネクタ自動組立機械・検査装置のTSS(本社東京、社長田中淳氏)とポンプ・送風機等製造販売のポエック(本社広島県福山市、社長釆女信二郎氏)との共同出資によりアムノスを朝日町に設立、産学連携プロジェクトとして商品化を目指してきたもの。

 アムノスでは、今回の輸入承認を受け、韓国の医療制度の下で2021年1月から健康保険および自由診療適用の、皮膚科領域の一部をターゲットに絞って製品登録作業に入った。作業完了は4月ごろを目途にしているが、登録が完了すれば「現地の医療関係機関向けにこれまでは画像などの資料しか提供できなかったのが、サンプル出荷も可能になり、実際の製品を医療現場で確認できる。その効果は大きい」(同社)とし、期待も高い。

 韓国では美容に対する意識が高く、専門クリニックも多い。人口比の美容施術数は世界トップにあり、近年は国の後押しもあって美容整形など皮膚科領域の医療ツーリスト受け入れに積極的で、アジア地域から訪れる人も増えている。

 販売は現地の販売代理店が行い、「クリニックや病院情報を蓄積し、フィードバックされた情報などを通じて今後の営業戦略に反映させるとともに販売実績を積み上げていきたい」(同)考えだ。