【ケンシン工業】江戸から続く伝承の技が生んだ高級櫛(くし) 往時の商標「鶴亀印」も復活

  金属加工業のケンシン工業(本社氷見市、社長飯田和男氏)は1918(大正7)年の創業から100年以上にわたって受け継いできた縫い針の研磨技術を活かし、滑らかで櫛通りのよい高級櫛を開発した。往時の商標「鶴亀印」を復活させ、「つるかめ印のビューティーコーム」としてこのほど発売した。
 
 氷見地方では江戸時代から縫い針の製造が盛んで、国内三大産地の一つだった。売薬の土産として氷見の針が紙風船などともに使われた歴史もあるという。一大産地だった広島が戦災で壊滅的な被害を受け、国内で使われる縫い針の生産を同社がほぼ一手に引き受けたこともあるが、その後、生活様式の変化とともに縫い針の需要は次第に減少していった。1959年ごろから、縫い針に代わるものとして織機の筬(おさ)に使われる針の製造を始め、住宅建材加工とともに今に続く同社の柱の事業の一つになっている。

 筬は糸の位置をそろえるための付属具で、直径0.5mm~2.0mmの穴のない先端の丸い針が櫛状に並び、針と針のスリットに経(たて)糸を通す。針の間隔と径が小さいほど密度の高い布ができる。筬の針をつくる企業は全国的にもきわめて少なく、同社は北陸で唯一のメーカーだ。

 発売した櫛は、こうした筬の針で培った細い線材を鏡面研磨のレベルまで加工できる熟練の技術を、抵抗の少ないステンレス素材の歯に活かした。太さの異なる歯を2段に並べることで、静電気が起きにくく、からんだ髪にもしなやかに通り、ふわっと仕上がる。持ち手は地元産材のひみ里山杉を使用し、一つ一つ丁寧に磨き上げ手にフィットする形状に仕上げている。

 櫛は、長さ12cm、縦8cmの手のひらサイズ。価格は3,630円(税込み)。氷見漁港場外市場 「ひみ番屋街」や氷見温泉郷総湯、湊酒店のほか、自社のホームページからも購入できる。