富山県内企業の設備投資進捗動向(2)

【日産化学】
世界的な需要の高まり受け、シアヌル酸製造設備を増強

 日産化学(本社東京、社長木下小次郎氏)は富山工場(富山市)で進めてきたシアヌル酸の製造増強設備が12月に完成する。

 シアヌル酸を原料に製造される塩素化イソシアヌル酸は生活用水や排水の消毒・殺菌剤として幅広く使用されており、同社ではプール・浄化槽向けに「ハイライト」を製造・販売している。近年では途上国の飲料水・プール水など、水の衛生に対する社会的な要請の高まりから、世界中でシアヌル酸の需要が旺盛になっていることから、増産体制を整備するとともに、幅広い分野で使用される材料を提供していくという。

 同社の化学品事業ではシアヌル酸誘導品群の伸長を中期経営計画の主要施策に掲げており、特長あるトリアジン骨格を有するシアヌル酸由来の高機能化学品TEPIC(粉体塗料用硬化剤、半導体封止樹脂用原料、ソルダーレジストインキ用原料)、メラミンシアヌレート(非ハロゲン難燃剤、潤滑剤)の拡販およびスターファイン(シアヌル酸亜鉛:対金属用密着性向上剤、防錆塗料用添加剤)の本格事業化にも取り組んでいくとしている。

【伏木万葉埠頭バイオマス発電合同会社】
高岡市万葉埠頭で5.1万KWのバイオマス発電、21年10月運転開始予定

 同社(本社高岡市、職務執行者安田勇氏)は、東京ガス100%子会社のプロミネットパワーがアジア太平洋地域でインフラ開発を手掛けるシンガポール・エクイス(Equis)が運営するファンド保有のプロジェクトを取得した事業主体会社。

 2021年10月の運転開始予定で現在、高岡市伏木万葉埠頭(敷地4.5ヘクタール)に木質ペレットを燃料とするバイオマス専焼発電所を建設中。発電出力は5.1万kW。ボイラーはオーストリアのアンドリッツ製、蒸気タービンはドイツのシーメンス製を採用。主燃料は国内大手総合商社と年間20万トン、運転開始後20年間の燃料供給契約を締結し、適切に管理された森林を第三者機関が認める制度に基づく森林認証を取得した木質ペレットを北米・東南アジアから輸入するという。

 木質ペレットは、木材を細粉し、圧力をかけて直径6~8mm、長さ5~40mmの円筒形に圧縮成形した固形燃料。発電した電力は固定価格買取制度(FIT)による売電単価24円/kWhで北陸電力に売電する。同社の安田勇職務執行者は「プロジェクトを計画通りに立ち上げ、予定の発電量を送り出したい」と語る。

 所要資金は、合同会社が三井住友信託銀行を幹事行とする銀行団からプロジェクトファイナンスにより調達した。

【中越エコプロダクツ】
新素材「マプカ(MAPKA)」の新工場

 同社は中越パルプ工業(本社高岡市、社長加藤明美氏)と環境経営総合研究所(本社東京、社長松下敬通氏)との合弁会社。環境経営総合研究所が独自に開発した新素材「マプカ(MAPKA)」シートを製造するため、中越パルプ高岡工場敷地内で新工場を2019年9月に着工し、建設中。

 マプカはセルロース・ファイバーを主原料に合成樹脂を混合した素材で、従来のプラスチック容器と同等の機能をもつ。海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックによる環境汚染が世界的問題となっているなか、環境性能の高い製品として一般ごみとしての廃棄も可能。惣菜や弁当に使われるプラスチック容器の多くは使い捨てだが、これをマプカに代えることで、プラスチックの使用量削減などの環境対策を推進できると期待されている。

 新工場では酸素バリア性を有する食品トレー用のマプカシートを製造する予定で、生産能力は年間12,000トン。工場は敷地面積8,450㎡、鉄骨造り地上2階、延べ床面積6,612㎡、建築面積5,530㎡。2020年秋の完成を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響等を受け、来年春ごろにずれ込む見通しとなった。

【アステラス製薬・富山技術センター 】
免疫抑制剤の原薬製造施設に約100億円投資

 アステラス製薬(本社東京、社長安川健司氏)は、生産子会社であるアステラスファーマテックの富山技術センター(富山市興人町)に、プログラフ(一般名タクロリムス水和物)の新たな原薬製造施設「第3発酵棟」を建設中。地上3階建て、延べ床面積約7,220㎡。2020年4月に着工、完成予定は2021年9月と当初より1カ月程度延びる見込みという。総工費は約100億円。

 プログラフは、アステラス製薬が創製し、臓器移植後の拒絶反応を抑制するための第一選択薬として約100の国と地域で販売されている免疫抑制剤。日米欧市場では独占販売期間が満了している製品だが、2021年3月期計画のグローバル売り上げで1,820億円を見込む、同社の主力商品の一つ。

 富山技術センターは現在、国内外向け原薬製造および製剤・包装までの全製造をが担っているが、既存施設「第2発酵棟」の今後の老朽化を踏まえ最新鋭の製造施設を備えた第3発酵棟に設備を集約、プログラフをより高品質で安定的な需要に応える製品としてグローバル供給できる生産体制を構築する。

【NSK富山・高岡工場】
熱処理工程を藤沢から高岡工場に移管、災害時などのBCP体制強化

 ベアリング事業で国内首位の日本精工(NSK)は、藤沢工場(神奈川県藤沢市)から熱処理工程の一部をグループ会社、NSK富山(本社高岡市、社長山本和正氏)に移管し、それに伴い2020年7月、NSK富山・高岡工場(高岡市戸出、高岡機械工業センター内)に新工場を増設した。建築面積は3,641㎡、投資額は約30億円。

 NSK藤沢工場では、1937年以来軸受(ベアリング)を生産し、産業機械軸受の旋削、熱処理、研削、組立まで一貫生産を行っており、NSK富山では、1966年に創業して以来、風力発電や鉄鋼向けなどの大形軸受の鍛造や旋削を行っている。

 藤沢工場からNSK富山への一部熱処理の移管は、地震や洪水などBCP(事業継続計画)に伴う災害時のリスク分散と大形軸受の生産強化が狙い。NSK富山では、好調な風力向けを中心に軸受の鍛造、旋削から熱処理までを担い、高岡工場では、既存の鍛造や旋削工程の設備を整流化し活用・拡充しつつ最新の熱処理加工技術を導入し、既存の鍛造や旋削工程を整流化、搬送自動化することによって高効率工場を目指している。 

 このほか、スギノマシン(本社魚津市、社長杉野良暁氏)は早月事業所(滑川市)に微粒テストセンターを2021年3月完成、5月の稼働予定で建設中だ。

 コマツ(本社東京、社長小川啓之氏)は総工費約37億円を投じ、氷見第二工場(氷見市)で基幹部品から潤滑油の漏れを防ぐ精密部品「シールリング」をつくる新工場を建設する。工作機械を手がけるコマツNTC(南砺市)と開発した高性能の生産設備やAI(人工知能)による自動検査装置を導入し、最大5割の省人化を目指す。

 建屋は鉄骨一部2階建てで、延べ床面積は8230㎡に増え、2021年5月の完成、同年11月からの量産開始を予定している。建設から約60年たった氷見第一工場(氷見市)からシールリング工場の機能を移すため、部品の生産量は増やさず倉庫として活用する。