高齢化や土地持ち非農家の増加により発生する荒廃農地 富山県は全国最少
農地は耕作されないまま放置されると年々荒廃していく。農林水産省がこのほど公表した資料によると、全国の荒廃農地面積(2019年11月30日時点)は約28.4万haとなった。このうち、再生利用が可能な荒廃農地は約9.1万ha、再生利用が困難と見込まれる荒廃農地は約19.2万haだった。都道府県別では長崎県、鹿児島県、長野県の順に多く、富山県は353haで最も少なかった。
農地面積は、工場用地や宅地等への転用、荒廃農地の発生などにより、過去最大であった1961年の609万haに比べ、2019年は439.7万haと170万ha減少している。農水省は、食料自給率を向上させるには優良農地の確保と担い手への農地集積・集約化が重要であるとして、荒廃農地の再生利用に向けた施策を推進しており、市町村及び農業委員会が荒廃農地の発生・解消状況について現地調査を行っている。
農水省が2014年に行った調査では、荒廃農地の発生原因は「高齢化、労働力不足」が最も多く、次いで「土地持ち非農家の増加」が多かった。2019年に行った別の調査によると、基盤整備事業が実施された地区においては荒廃農地の発生が極めて少ないことがわかった。

荒廃農地面積の推移
出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策について」2020年4月

耕作放棄地面積の推移
出典:「荒廃農地の現状と対策について」2020年4月
荒廃農地の面積は近10年間、28万ha前後で推移している。荒廃農地は現地調査による客観ベースの毎年の調査であるのに対し、5年に1回農林業センサスで調査している耕作放棄地は、調査票により農家等に耕作意思を確認する主観ベースの調査となる。耕作放棄地の面積は増加傾向にあり、2015年は42.3万haだった。
富山県では2008年に荒廃農地が551haあったが、2009年度以降、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金やみどりの農地再生利用事業、美しい農村景観整備事業などの荒廃農地対策に積極的に取り組み、2011年以降は300ha台にまで減少した。水田率およびほ場整備率が高いことも、荒廃農地の発生抑制に寄与しているとみられる。
荒廃農地面積は2018年までは大阪府が最小であったが、2019年は大阪府の荒廃農地面積が増加したことにより、それまで大阪府に次いで少なかった富山県が全国最少となった。面積がほぼ同じ北陸三県でみると、石川県が5,093ha、福井県が1,255haであり、富山県の少なさが際立つ。