県内上場企業、第1四半期決算から見える2021年3月期見通し(3)

 3月期決算会社の2021年3月期第1四半期(4~6月期)決算開示ののち、新年度も半年を経ようというこの段階でも、県内上場企業17社(金融除く)のうち5社(9月末)は新型コロナウイルス拡大による業績への影響が見通せないとして、いまだ2021年3月通期の業績予想が未定のままだ。

 5社は田中精密工業、日本製麻、CKサンエツ、タカギセイコー、アイドママーケティンコミュニケーション。ただ株主配当のみCKサンエツは5月発表時に期末の実施を公表済み、アイドマは上期(4-9月)の中間配当実施をこのほど適時開示した。

 前年度に比べて2020年度の業績悪化は避けられない見通しの中、企業が株主配当を重視する姿勢に変化はなく、2020年3月期で開示した業績予想を維持し、株主配当を据え置くとしているのは、先に記した川田テクノロジーズ、エヌアイシ・オートテックのほか日医工、北陸電気工事、トナミホールディングスの5社がある。

期初計画の業績予想を維持 
北陸電気工事

 北陸電力系の電気工事会社。電力会社の設備投資などに左右される面が大きく、電力自由化に伴い近年は公共工事を中心に全国展開を推進、北陸電力向け比率も漸減傾向。東京や大阪などの大都市圏での受注強化で次世代の無線通信規格「5G」の商用化など電気設備や通信設備などの需要に対応し、昨年度末からの繰越高は過去最高を記録した。

 第1四半期は増収減益だった。売り上げ総利益率は14.4%と前年同期比0.3ポイント改善するも販管費の増加で経常利益、純利益とも微減益となった。2021年3月期中間、通期も前年比で減収減益を見込むが、期初に公表した業績予想を据え置き、株主配当も期末25円を継続する。減収減益とはいえ期初の見込みを維持できるのは、財務基盤にある。2020年6 月末現在で流動比率267%、現金預金が 221億5000万円と総資産の44.5%を占め、自己資本比率は71.8%。

日医工

 医家向けジェネリック(後発)医薬品大手、日医工の第1四半期は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う受診抑制に加え薬価引き下げなどから主力の循環器・呼吸器用薬などの販売が大きく落ち込み、さらに2016年に734億円で買収した注射剤の製造販売を手掛ける米国セージェントが進めていた内製化の遅れが影響、セグメント別コア営業利益(国際会計基準)で日医工は前年同期比半減し、セージェントは5億1,100万円の赤字となった。連結四半期利益は3億400万円で同比約6分の1にとどまった。

 21年3月期通期は売り上げ1,990億円、コア営業利益、営業利益ともに75億円と増収増益を見込み、中間(4-9月)、期末それぞれ15円配当を予定する。

 同社は事業領域深化による規模拡大で成長を図ってきた。ここ数年だけでも米国子会社セージェントを通じて行う乳がん治療注射剤「フルベストラント」の販売拡大や19年4月にエーザイから買収したエルメッドの統合、武田テバファーマのジェネリック医薬品事業を買収、高山工場(岐阜県高山市)も譲り受けて、これまで外部委託していた特殊製剤を内製化し、グループ内での内製化を図る。また国内での骨粗鬆症治療薬「エディロール」後発薬の発売、バイオシミラーでは2017年に国内発売した潰瘍性大腸炎治療薬「インフリキシマブ BS」の米国での上市も新型コロナウイルスの感染拡大の影響でずれ込むものの、期待をかける。

 ただ2019年の抗菌剤セファゾリンに始まり直近の今年9月にいたる間に同社医薬品の自主回収が相次いでいる。有効な治療方法が提供されていない多くの疾患に応えていくのは、医薬品業界全体に課せられた重要な使命であり、厳しい競争の世界にあってはなおさらに安心と安全に裏打ちされたブランドの確立が求められよう。

2021年3月期は未公表
CKサンエツ

 黄銅棒・線で断トツのシェアをもつサンエツ金属、鉄管継手のシーケー金属を傘下に置く。第1四半期(4-6月)は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う景気の急速な悪化に加えて、主要原材料の銅の相場リスクに備えたデリバティブ(金融派生商品)で評価損(11億5,700万円)が発生し、17年3月の東証上場以降で初めて経常、純損益で赤字を計上した。

 売上高は前年同期比27%減少、営業利益は86.2%減小し経常損益は12億8,900万円の赤字(前年同期17億5,200万円の黒字)だった。銅の国内建値は、中国の景気が回復しつつあることと、感染拡大でチリの鉱山の操業が一部停止したため上昇に転じたもの。めっきも8.7%売り上げが減ったほか、カメラマウントも落ち込んだ。今期の年間配当は前期の100周年記念配当10円を落とし普通60円にするが、当初の配当方針を維持する。

 中間(4-9月)、通期見通しは新型コロナウイルス感染症の収束時期の見通しが立たないとして非開示としたが、今期は計画通り31億9,000万円を設備投資し、需要の回復局面に備えて生産効率の向上を図る。同社は人手不足や働き改革対策に積極的に取り組んでおり、すでに業界初の夜勤レスを導入、夜間の工程を無人化するための先行投資を進める。

 M&Aへの取り組みにも積極的だ。2020年6月、子会社のサンエツ金属は、日立アロイから黄銅棒事業及び加工品事業と黄銅線製造設備を、日立金属から同社桶川工場の銅合金事業を、日立金属商事から当該事業に関する営業権を、それぞれ譲り受け契約を締結した。業界再編の地歩をさらに進めるけん引役として注目される。