NEDOの事業に採択された県内企業の研究開発、革新的な技術シーズの事業化へ

 日本最大級の公的技術開発マネジメント機関であるNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、エネルギー・環境技術や医療技術(生命科学)、情報技術、ナノテクノロジーなどの幅広い領域でイノベーションの創出と新技術の市場化を推進し、革新的な技術シーズの発掘から事業化までの支援体制を構築している。それぞれの分野で応募して採択された県内企業の研究開発テーマを紹介する。

【スギノマシン】
ウォータージェット技術で革新的CNF製造プロセス技術の開発

 NEDOの助成事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」に採択されたのは、スギノマシン(本社魚津市、社長杉野良暁氏)の「ウォータージェット技術を用いた革新的CNF製造プロセス技術の開発および乾燥技術の開発」。

 CNF(セルロースナノファイバー)は植物細胞壁の主成分であるセルロースを直径約20nm、長さ数μmにほぐすことで生まれる最先端のバイオマスナノ繊維素材。鋼鉄の5分の1の軽さで、強度は5倍以上、熱による伸び縮みが少ないなど多くの利点を有し、森林資源を生かせる新素材として世界的に注目されている。

炭素循環社会に貢献するCNF関連技術開発プロジェクトの概要

 同社は2011年から独自のウォータージェット技術を用いたCNFを「BiNFi-s(ビンフィス)」の商品名で開発・販売しており、2016年以降、NEDOの助成事業や委託事業に参画して効率的なCNFの製造技術や樹脂複合化用の乾燥粉末の開発を進めてきた。

 関連技術の進展で実用化に向けてユーザー企業からの期待が高まる一方で、CNFの市場拡大にはさらなる用途の開拓やコストダウンが求められている。CNFの固形分濃度は一般的に数%と低く、溶媒が大部分を占めるため、輸送の際に重量がかさみ、輸送コストが相対的に高くなる。固形分濃度を高めるにはドライパウダー化が必要となるが、CNF分散液を単純に加熱して乾燥させるとCNF同士が強固に凝集するため、溶媒中に再分散しないという課題があった。

 今回の採択を受け、同社はCNFおよびCNF複合樹脂の製造コストを大幅に低減させる製造プロセス技術の開発を進め、用途開発の促進、安全性評価等を行って、CNFを利用した製品の市場拡大の早期実現を目指す。同事業の実施期間は2020~24年度の予定。

【大建工業】
CNFを利用した住宅・非住宅用内装建材の開発

 大建工業(本店南砺市、社長億田正則氏)は利昌工業(本社大阪市、社長利倉幹央氏)と「CNF技術を利用した住宅・非住宅用内装建材の開発」を共同提案し、同じく「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」 助成事業に採択された。利昌工業が開発中のCNFを主原料とした成形体の製造技術をもとに軽量で高強度の新しい価値をもつ建材の創出につなげる。

 利昌工業はほとんどが水分で構成されるCNFを板状にする製造技術をもっている。今回はCNFのみ、もしくはCNFを主成分とした新しいCNF成形体や複合体、例えばハニカムコアを挟んだサンドイッチ構造のパネルの製造・成形加工技術の開発を行う。

 大建工業は、利昌工業が製造するパネルを同社の得意分野である室内用ドアや床材、壁材などの内装建材用途として設計・評価し実装検証を行う。こうした建材などの構造部材には工業原料として大量のCNFを必要とするため、新規用途の開拓によりCNFの大量需要の創出と建材製品の量産化、将来的にコストダウンにつなげるねらいもある。また建材製造時や資材運搬、施工時を含めた製品ライフサイクル全体でのCO2排出量の総合的な削減も期待できる。

 研究体制として、秋田県立大学木材高度加工研究所、筑波大学大学院生命環境科学研究科とそれぞれ共同研究を行い、基礎的な研究も推進する。助成期間は 2020年9月から2023年2月28日で、事業費総額は助成金を含め2億8,000万円。

【富山環境整備+三光合成】
廃プラスチックをリサイクルするプロセス技術開発

 NEDOの2020年度新規プロジェクト「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」の委託先に、富山環境整備(本社富山市、社長松浦英樹氏)や三光合成(本社南砺市、社長黒田健宗氏)など計24の企業、大学、研究機関が選ばれた。

 陸域から流出した廃プラスチックが海洋プラスチックごみ問題として世界的な課題となっているなか、NEDOは廃プラスチックを適正に処理し、資源として循環させるための革新的なプロセス技術開発事業に着手する。

革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発事業の概要

 事業は①高度選別システム開発、②材料再生プロセス開発、③石油化学原料化プロセス開発、④高効率エネルギー回収・利用システム開発を連携させて行い、廃プラスチックの高度有効活用に向けた基盤技術開発を目指す。

 富山環境整備、三光合成は材料再生プロセス開発に参加し、それぞれプラスチックごみの回収・選別、成形加工技術を軸としたノウハウ等を持ち寄って大学・研究機関などと協調連携して開発を進める。

 プラスチックは加工工程や使用状況に応じて劣化するため、材料再生プロセス開発では、多様な廃プラスチックの物性劣化の要因を解明しながら、高度再生原料化および成形加工技術の開発を行う。最終的に廃プラスチックを新品のプラスチックと比べ90%以上の材料強度(靱性)に再生することが目標だ。

 NEDOは同事業を通して、これまで国内で再資源化されていなかった廃プラスチックのうち年間約300万トンを有効利用し、資源循環させていく。事業期間は2024年度までで、予算は35億円を予定。