異例ずくめの株主総会 終わってみれば

 3月期決算の上場企業の多い日本では6月が総会シーズンだ。今年は6月25、26日の開催日をピークに大半は終わったものの、例年とは異なり新型コロナウイルス感染症の拡大で株主総会を未だに開催できない企業がある。

 国は新型コロナウイルス感染症緊急事態を4月7日に宣言したが、経済産業省および法務省、金融庁は社会全体の喫緊の課題となった状況を受け2020年4月2日付(同月28日最終更新)で3カ月を超えないことを目安として株主総会の運営の指針となる「株主総会運営に係るQ&A」を公表、会社法上適法と考えられる措置を公表した。

 各社が総会招集通知で、事前に書面またはインターネット等で議決権の行使を求め、株主に来場の自粛を促した。来場する株主はマスク着用、検温・手指消毒はもちろん、会場では座席を大幅に減らして間隔を広くし、業績の概況説明を簡潔にしたり、株主からの質問を制限したりして、例年より総会にかかる時間が短縮されたのはこうした指針を下地にしたものだ。

 定時株主総会の開催日も例年とは異なる。新型コロナウイルス感染症の拡大が事業活動や決算作業等に影響を及ぼし、開催日を6月から7月以降に延期する企業が少なからず出たことが報道されている。定時株主総会の延期については、法務省「定時株主総会の開催について」に記されており、以前から認められてきた。

 富山県内では3月決算企業で総会を延期したところはないものの、射水市に事業所を置きBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業・ロードアシスト事業などを行うプレステージ・インターナショナル(東証1部、本社東京)は、総会を7月30日に延期し、富山BPOタウンを会場に開催する。

 東芝は7月31日に、ジャパンディスプレイは8月26日に開催する予定だ。定時株主総会の延期は国際的な動向だ。とくに海外で事業展開を進める大企業では、海外子会社の現地法人において都市封鎖などが実施されている影響により必要な監査法人による監査手続きが実施できず、決算確定に送れが生じたためとしている。

 今年の総会で特徴的だったのは、株主総会当日の運営にインターネットを活用した株主総会を開く上場企業が増えたことである。地元では、富山にある北陸銀行と北海道にある北海道銀行の持株会社ほくほくフィナンシャルグルーブのように、インターネットで結んで「バーチャルとリアル」の株主総会を隔年で交互に開催しているケースもある。新型コロナへの対応とはいえ、モニター画面を通じたオンラインの総会運営の導入の契機になるかもしれない。総会は株主が直接経営者の声と息遣いを感じ、意見をかわす対話の場でもある。現実には法整備やIT基盤がなく接続手段を持たない株主への配慮など多くの課題が残る。

 各社が開示した2020年3月期決算はあくまで「今年の3月まで」の数字でしかない。新型コロナウイルスの影響がどの程度となり、いつまで続くのかがはっきりしない中で企業業績への影響を測れず、2021年3月期の業績予想を未定とした企業が多い。 

 東証は7月28日、2020年3月期の決算短信集計を発表した。製造業(16 業種)、非製造業(13業種)、金融業を含む全社(33業種)の「2020年3月期決算短信」を発表した。東証上場内国会社2,322社のうち、当期及び前期の変則決算会社並びに2019年4月1日以降の新規上場会社計38社を除く2,284社の売上高(営業収益)、営業利益、経常利益、当期純利益、配当金総額、総資産、純資産、自己資本と、ROE(自己資本当期純利益率)、総資産経常利益率、売上高営業利益率、自己資本比率、配当性向、純資産配当率の財務諸比率(2020年7月20日現在)をまとめたものだ。

 前年比較で営業利益、経常利益とも20%台の減少となり、配当金総額は9兆8,496億円で0.52%減った。純資産は355兆4,194億円、自己資本331兆274億円でそれぞれ2%台の落ち込みとなったが、売上高営業利益率では6.57%から1.34ポイント下落して5.23%に、自己資本比率は30.91%から29.78%に、配当性向は31.64%から47.73%へ16ポイントも悪化、「緩やかに回復している」としていた景気は年度初めのコロナウイルスの感染拡大で大きく腰折れした。

 5月期の決算発表が済んで、3月期の2020年4~6月期の第1四半期決算発表が来週から本格化する。新型コロナウイルス禍で、幅広い業種で業績悪化が見込まれ、その落ち込み幅が焦点となろう。21年3月期の業績予想を未定とする企業も多く、先行き見通しに対する経営方針が注目される。