【佐藤工業】海外工事の売り上げ比率18%強、収益化に貢献 技術力・現場力の向上へ技術センター新設

 土木・建築を柱とする中堅ゼネコン、佐藤工業(本店富山市、社長宮本雅文氏)の2019年6月期業績は、連結ベースで売上高1,491億円(対前年比8.4%増)、営業利益37億円(同7.2%減)、経常利益37億6,900万円(同9.3%減)、純利益20億3,300万円(同47.7%減)の増収減益となった。単体では売上高10.9%の増収だったものの、利益が落ち込み、増収減益。売上総利益率は7.8% (109億円)と0.8ポイント下回った。

 「減益理由は補修費用の関係で、一過性のもの」としており、「公共投資、民間投資ともに堅調な水準にあり、今期は順調な海外工事に加え国内の大型物件の取り込み、利益生産性を上げて増収増益」(宮本社長)となる見込みだ。

 単体の売上高は土木が561億円で横ばいだった半面、建築は821億円と20%増加。うち海外工事は前年の189億円から254億円に回復し、占める割合は18.2%となり、前年比3.2ポイント増加した。工事が順調に進捗しているシンガポールの地下鉄工事やデータセンターなど大型物件が寄与し、売り上げ全体の伸びの半分を海外工事で占めたことになる。

〔完成工事〕広島県廿日市市次期一般廃棄物処理施設
ごみ処理で発生する熱で発電し、余熱を近隣事業者に供給することで世界最高水準のエネルギー効率を目指している。

 2020年6月期は、国内では民間企業として初めて手掛けた、横浜市みなとみらいに1万人収容できる音楽アリーナ「ぴあMMアリーナ」(神奈川県)が、海外ではミャンマーの「マグウェイ総合病院」など大型物件がともに来春に完成するなど、連結ベースで売上高1,735億円(前期比16.4%増)を見込む。

 営業利益、経常利益はともに38億円、純利益は33%増益の27億円を計画し、売上総利益率で7%台を確保する。単体は売上高1,602億円(同15.0%増)、売上総利益116億円(同7.3%増)、営業利益32億円(同3.2%増)と増収増益を見込んでいる。アリーナ建築は仙台から始め、北海道・函館、秋田・由利本荘で施工実績を積んできただけに、「コスト優位性などで評価を受け首都圏でも引き合いがある」(宮本社長)という。

〔受注工事〕埼玉県所沢東町地区第一種市街地再開発事業施設建築物等建設工事 地上29階、高さ99.70m、総戸数155戸の分譲タワーマンション。22年1月竣工予定。

 単体の受注高は109億円減少して1,599億円と、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動が影響しているようだが、海外工事の受注高は前期比さらに10億円積み増し470億円を計画しており、売上高で前期比63.3%増の415億円と大幅の伸びとなる。

 利益生産性を重視し5年後の事業・経営基盤構築に向けた第6次中期経営計画(2020年6月期~22年6月期)も発表、22年6月期で連結売上高1,939億円、売上総利益158億円、営業利益65億円の数値目標を掲げた。

 その一環として10月1日付で組織改正し、新たに「技術センター」を設置する。技能者の高齢化や若年層の建設業離れにより、今後さらに担い手不足が進むなか、現場環境の改善をはじめ環境保全への取り組み人材育成とともに総合的な技術力・現場力の向上を図り、新規事業などの多角化につなげる。

 建設地はつくばエクスプレス万博記念公園駅から近い距離にあり、敷地は約1万6,021平方メートル。センター棟、研究開発を行う2つの実験棟で構成。21年7月の一部完成・運用開始、22年3月の全体完成を目指している。

人事
 会長(顧問)川田紳一▽監査役、川田工業取締役経理部長宮田謙作▽建築事業担当(建築事業本部長)取締役常務執行役員医療機器販売担当伊藤隆実▽建築事業本部長(九州支店長)執行役員勝山正昭▽執行役員九州支店長(九州支店建築事業部長)中村豊彦▽相談役(会長)多田勝彦=以上9月25日付▽技術研究所担当を解く、取締役常務執行役員土木事業本部長平間宏=以上9月30日付▽取締役常務執行役員技術センター長、建築事業担当兼医療機器販売担当伊藤隆実=10月1日付