グッドデザイン賞に県内から12件が受賞 うち3件が「ベスト100」に

  公益財団法人日本デザイン振興会の主催による「2019年度グッドデザイン賞」が発表され、富山県関係では12件が受賞した。そのうち、YKKのファスナー、北日本新聞社の新聞ラッピング「富山もよう」、プロジェクトデザイン(滑川市)などのカードゲーム・書籍の3件は、審美性や提案性、可能性など総合的に優れている100点に贈られる「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。

 今年は4,772件の応募のうち、過去最多となる1,420件が受賞、受賞企業数は940社だった。「グッドデザイン大賞」は10月31日に審査員とグッドデザイン賞受賞者による投票を実施して決定する。受賞作は10月31日~11月4日、東京ミッドタウンで開催される「2019年度グッドデザイン賞受賞展」で全件が紹介される。

 富山県内関係で受賞したのは次のとおり。

◇グッドデザイン・ベスト100

ファスナー「GreenRise」 
受賞企業:YKK(本社東京、事業所黒部市、社長大谷裕明氏)

 ファスナーを構成する芯紐、ミシン糸、テープ、モノフィラを、従来の化石燃料由来のポリエステルではなく、植物由来ポリエステルに置き換えて開発した。植物由来ポリエステルは砂糖の生産過程で発生する副産物であるサトウキビの廃糖蜜由来を有効活用している。環境商品開発に対する姿勢や、副資材業界への影響力が高く評価された。

新聞ラッピング「富山もよう」
受賞企業:北日本新聞社(富山市、社長駒澤信雄氏)

 「富山のいいもの、もようにしたら、富山をもっと好きになる」を合言葉に、雷鳥やガラス細工、立山連峰などの富山の特産品や名称を模様にした新聞ラッピング。紙面をエコバッグにしたり、飾ったりするなどの予想外の反響を得たほか、新聞紙面を超えてプロダクトや自治体との連携事業にまで発展。見事に段階設計された展開はシビックプライドとして県民の理解へとつながっていく事例と評価された。

カードゲーム「SDGs de 地方創生カードゲーム」、書籍「持続可能な地域のつくり方」
受賞企業:特定非営利活動法人イシュープラスデザイン(東京)、プロジェクトデザイン(滑川市、社長福井信英氏)

 SDGsや地方創生に主体的に取り組む人材育成を目的として開発したカードゲームと、具体的な方法論を集約した書籍。カードゲームでは行政役と住民役に分かれ、対話や協働を学びながら持続可能な地域の未来を創造、体感、シミュレーションする。全国の様々な課題解決事例を盛り込み、対話や行動を起こすことでまちの未来の変化を体感できる「熱狂を生むデザイン」にこだわったという。具体的かつ高い完成度で作られている優れた取り組みと評された。

◇グッドデザイン賞

ノート「BETWEEN(ビトウィーン)」
受賞企業:ショウワノート(高岡市、社長片岸茂氏)

 180度水平に開く「水平開き製本」で、中央に段差がなく、ストレスフリーに使用できる。水平開きの機能を分かりやすく伝えるため、ノートを開いたままのパッケージで販売することで、店頭でフラットな開き具合と、使用時の自由さを体験できるようにした。既成概念を覆した水平開きで見るものに驚きを与え、その売り方もノートの特性を引き出すものと評価された。

フェンス「アルミス」
受賞企業:三協アルミ社(高岡市、社長中野敬司氏)

 アルミの押出形材を金太郎飴のように切断し、パーツ化したものをつなぎ合わせて造る新しいファサードアイテム。押出技術によって生まれる繊細なラインデザインは鋳物とは違ったシャープさがあり、抜きテーパーのない奥行感が外構に深い影を落とし豊かな表情を生む。押出材の断面をユニット式に組み合わせたアイデアや、様々なシーンに対応できる可能性が評価された。

観光船「富岩水上ラインkansui」
事業主体:富山県

 環水公園から中島閘門を通り、岩瀬を結ぶ運河クルーズ「富岩水上ライン」を運航する観光船。蓄電池とソーラーパネルを利用した電気船で、軽量化を考慮したアルミ合金製。バリアフリートイレを設置するなど、増加する観光客のニーズにも応えた。シンプルながら力強いデザインが都会的であり富山の自然とも響き合う点、船内の回遊性が確保されている点などが高く評価された。

医療用弾性ストッキング「クール ララ」
受賞企業:ベーテル・プラス(東京)、吉田司(石川県)、臺美佐子(富山県)、村山祐子(石川県)

 リンパ浮腫や静脈瘤を治療する「患者さん目線の医療機器」として開発された、きれいな配色のツートンカラーの医療用弾性ストッキング。臀部と股下で色を分け、着用時は一般的な色合いの部分のみが見えるようにした。縫い目を表側に出す縫製仕様で、敏感肌にも配慮。パッケージは小物入れとしても使える。患者を生活者として捉え、そのQOL向上を目指して丁寧にデザインされている点が高く評価された。

住宅「石籠の家」
受賞企業:濱田修建築研究所(富山市、代表濱田修氏)

 射水市太閤山の新築住宅。隣接する緑地帯と共鳴する素材を模索した結果、割肌を残す原始的な石籠(蛇籠)や焼杉を採用し、野趣あふれるたたずまいとなっている。桜が見えるようにと設けられた間口をはじめ、テラスやリビング、ダイニングの緑地帯への開放など、アウトドア志向の施主の趣向を取り入れた配置計画と材料選択の巧みさが高く評価された。

飲食店「あまよっと横丁」
受賞企業:濱田修建築研究所

 富山市の中心市街地の賑わい創出を目指し、1コンテナ1店舗を基本単位とした小規模飲食店による居酒屋横丁を民間事業としてプロデュースしたもの。横丁は14台のコンテナで構成し、工場で開口部や内装を施工した後、現地に搬入することで工期の短縮とコスト削減を図った。開口部分を覆うようにガラスを外周に巡らし、閉鎖と開放が共存する外観を実現、非日常的な空間と心地よい居場所を作り出している。

能作新社屋・新工場 
受賞企業:アーキヴィジョン広谷スタジオ、t.c.k.w、Koizumi Studio(以上、東京)、能作(高岡市、社長能作克治氏)、水野図案室合同会社(長野)

 産業観光の拠点となる社屋・工場の一体施設として、建築を構成する材料、家具、照明、サインなどに同社の鋳物をはじめ、協力工場、富山ガラス工房、富山県産杉材など地域の技、材料を最大限に活用している。従来、裏方であった鋳物の製作現場や木型倉庫などを表舞台としてその魅力を伝え、社員が誇りをもって働ける環境を創出。魅力ある建築空間は年間11万人が来館する高岡有数の観光スポットとなっている。

墓苑および法要棟「風の丘樹木葬墓地」
受賞企業:宗教法人慈眼寺、SRAN DESIGN、西部造園東日本統括支店(以上、東京)、MOA Creation(富山県、代表今井紫緒氏)

 東京都八王子市の多摩丘陵にある樹木葬墓地。周囲の地形と一体化する緩やかな地形を作り、芝生で覆って埋葬エリアとしている。個別埋葬区画は格子状に配置されているが、区画を仕切る構造物はなく、GPSで位置を管理。故人の名前の銘板は丘の外からは見えず、献花は花の部分だけを水に浮かべるなど、「土に還る」という樹木葬のコンセプトを体現し、ソフト面からハード面まで一貫性をもった空間・所作を提案している。

ホテル専用樹脂窓「HOTEL MADO」/客室用スチールドア「HOTEL DOOR」
受賞企業 YKK AP(本社東京、社長堀秀充氏)

 「HOTEL MADO」は従来のアルミ製窓に比べ、断熱性能を約3倍に向上させ、窓辺の寒さや結露を解消。客室利用時の換気と清掃時の安全性にも配慮した。「HOTEL DOOR」は扉下部の昇降式エアタイト構造で、廊下からの音漏れや光の漏れ、人の気配を遮断することで、客室全体の快適性を高めた。現代のホテル設備に求められる機能を高い次元で具現化している点が評価された。