米中関係と東アジア 「新しい冷戦」の行方は?

アメリカ国内で広まる中国不信

 2018年の春頃から米中貿易戦争が激化してきた背景には、貿易赤字の問題よりも、中国に対する不信感がアメリカ社会全体に広まっていることがある。互いに関税を掛けあったら、トランプ政権の支持基盤にも影響が出るし、大豆輸出に関税をかけたことも不満に思っているのは間違いない。だからといって彼らが表立ってトランプ支持をやめるということはない。

 これは権威主義的体制が民主主義体制、とりわけアメリカを見誤りやすい一つの面である。戦前の日本もそうやってアメリカを見誤った。今のところアメリカ国民の中国に対する脅威感が極度に強まっているので、アメリカは依然として強硬な姿勢を続けている。

 貿易赤字の問題と同時並行的に起こっているもう一つの大きな問題は、中国の通信機器のリーダーである中興通訊(ZTE)とファーウェイに対するアメリカの対応だ。両社はアメリカの司法当局によってイランへの経済制裁に違反したという容疑で取り調べられ、ZTEはクアルコムの半導体の調達を禁止されて経営難に追い込まれた。

 ファーウェイは、同社の副会長がカナダに入国した直後、米捜査当局の依頼を受けて逮捕された。ほぼ同時期に周・トランプ会談が行われていたが、アメリカ政府の公式発表では司法当局が勝手にやったと言っている。米政府機関からファーウェイ製品を締め出すだけでなく、ファーウェイと取引している企業も政府機関で仕事ができなくなるという。 

 中国にとってはジレンマである。ここでアメリカの言うように通商問題で譲歩しても、アメリカは中国が中国製造2025をやめると言うまで両社を潰しにかかるかもしれない。これはなかなか熾烈な冷戦と言っていい。 

 この深刻な紛争がどういう様相を呈するかは予測しがたい。2018年12月には、クアルコムがアップルを特許侵害で訴えた件で、中国の裁判所はアイフォンの販売停止を命じた。争っているのはアメリカの企業同士だが、その場所が中国というのは面妖な話だ。アメリカがファーウェイを潰す気なら、中国は全力でアップルを潰すという意図のようにみえる。

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