南北経済協力の行方
結論から言えば、北朝鮮のインフラ整備は、莫大な資金と長期的な計画を必要とすることから、まずは短期的かつ可能性の高い事業の実行により、北朝鮮に外貨をもたらすプロジェクトが火急の案件として浮上する。
開城と金剛山が目先の資金源
北朝鮮が本格的に改革開放へと動き出すかどうか重要な試金石は、金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地の再開がいつ実現するかである。これら2つのプロジェクトは、ある程度インフラが整い韓国企業も経験済みであることから、北緒戦にとって重要な外貨獲得源となる。
北方ビジネスは財閥の中でも現代グループの動向が注目される。現代財閥の創業者・故・鄭周永(チョン・ジュヨン)氏が北朝鮮出身者であることはあまりに有名であり、北方ビジネスの展開は、現代グループにとって故・鄭周永名誉会長と故・鄭夢憲(チョン・モンホン)会長の遺志を継ぐことに他ならない。
現代グループは2018年5月、南北経済協力タスクフォース(TF)チームを編成し、毎週会議を開いて現代グループ企業間の情報共有に努め、北朝鮮における事業再開に向けて検討を重ねている。
現代グループの北朝鮮事業は、1998年11月に金剛山(クムガンサン)観光から始まった。しかし金剛山観光は2008年7月の観光客襲撃事件を発端に2014年から現在までストップしている。
2018年11月が金剛山観光を開始してから20周年記念の節目に当たることから、韓国統一部から現代峨山(ヒョンデアサン/北朝鮮事業を担当する現代グループ企業)は訪北の承認を受け、北朝鮮・朝鮮アジア太平洋平和委員会(朝鮮労働党の外郭団体)と共同で、2018年11月18~19日に観光20周年南北共同行事が行われた。
政界関係者を含む北朝鮮訪問団の規模は107人(うち現代グループ役職員30人)であった。一方の北朝鮮側からはアジア太平洋平和委員会と金剛山特区関係者など80人が参加した。
なお現代グループは北朝鮮における電力、通信、鉄道、通川(トンチョン)飛行場、臨津江(イムジンガン)ダム、金剛山(クムガンサン)水資源、名勝地観光-白頭山(ペクトゥサン)観光など7つの社会間接資本(SOC)に対して、2030年までの独占事業権を保有している。このため、韓国財閥の中でも現代グループの具体的な動きが、北方ビジネスの成否を占う先行指標である。