【美術展から】バンクシーって誰?展/郷倉千靭・和子-遺品が伝える息づかい-

「バンクシーって誰?展」 本当に誰なのだろう
高岡市美術館

  イギリスを拠点に活動する、謎に包まれた正体不明の路上芸術家「バンクシー」の作品を紹介する「バンクシーって誰?展」が高岡市美術館で開幕した。北日本放送(本社富山市、社長瀧脇俊彦氏)の開局70周年を記念したもので、高岡会場は北信越地域で唯一の開催。12月6日(火)まで。

 バンクシーの政治・社会批判を反映した数多くの絵は各国の路上や壁、橋などに残されている。2018年には少女と赤い風船を描いた作品がサザビーズで高額落札されると額に仕込まれたシュレッダーで突然作品が細断され、世界中で話題となったほか、日本でもバンクシーが描いたと思われる絵が発見されて俄然、認知度が高まった。 

 企画展ではその「風船と少女」など個人の秘蔵品、オリジナル作品の展示のほか、活動の3大地域と言われる欧州や米国、中東の路上に描かれた作品と街並みを、まるで現地に立っているような感覚で日本テレビの美術チームが忠実に再現している。「フランス北部カレーの難民キャンプにスティーブ・ジョブズ氏を描いた作品"The Son of a Migrant from Syria"などは、ジョブズ氏の父がシリア難民であり、米国が多くの移民を受け入れてきたからこそ、アップルのような偉大な発明が生まれた」(企画プロデューサー)という皮肉が感じられる作品など、倉庫の広いスペースを利用した他の会場と異なり、美術館という仕切られた空間で見る臨場感はバンクシーの活動の意味を率直に考えさせる展示になっている。

 場内は一部を除き撮影可能。入館料は土日祝日が一般2,200円、高大生2,000円、小中学生1,200円、65歳以上2,000円、平日は200円引き(小中学生100円引き)。休館日は月曜日(9月19日、10月10日、12月5日は開館)と9月20日、10月11日。

郷倉千靭・和子-遺品が伝える息づかい-
射水市新湊博物館

   射水市出身で、日本画壇に大きな足跡を残した日本画家の郷倉千靭とその娘和子の遺作を紹介する企画展「郷倉千靭・和子-遺品が伝える息づかい-」が9月16日から射水市新湊博物館で始まった。

 郷倉千靭(1892・明治25年~1975・昭和50年)は射水郡小杉町(現射水市)に生まれ、東京美術学校(現東京芸術大学)日本画科で寺崎廣業に師事。卒業後に米国留学し、ボストン美術館で日本画の調査や複写作業に携わり、帰国後、院展を主な舞台に活躍した。1960(昭和35)年に日本芸術院賞を受賞、72年に日本芸術院会員となった。自然や動植物への親愛の情、仏教への崇敬、中国や聖域の神話への憧憬を込めた、写実的で斬新な装飾性、上品で澄み切った色彩溢れる作品の世界を築いた。

 千靭の娘・和子(1914・大正3年~2016・平成28年)は現東京都台東区谷中に生まれ、三輪田高等女学校(現三輪田学園)在学中に描いた作品が皇太后の献上画に推薦されたのを機に女子美術専門学校(現女子美術大学)日本画科に進み、首席で卒業。翌年、院展で「八仙花」 が初入選。以後安田靫彦に師事し、一貫して日本画の伝統にもとづく花鳥を題材としながら、西洋画の要素を取り入れた大胆な構図と華麗な色彩へ、さらに梅や日本家屋などの穏やかで滋味深い独自の高雅な画風で独自の境地を拓いていった。2002年文化功労者となり、千靭の故郷の小杉町で名誉町民としても顕彰された。

 今回の企画展は昨年、千靭の命日である10月25日に遺族から射水市に2人の作品の大下図や小下図、スケッチ、画材、アルバム、書簡などの遺品が寄贈されたことを受け、そのなかから選りすぐられた作品と千靭最晩年の「連峰白鷺」(高岡市美術館蔵)や「庭と仔犬」(富山県美術館蔵)など富山県内に所蔵されている作品を、下図と本作を比較しながら日本画10点を含む約50点を紹介、その造形性を再考する。

 11月13日(日)には「郷倉千靭と郷倉和子の人と作品」と題して浅地豊・秋水美術館館長と八木宏昌・富山県美術館学芸課長による記念講演会も開かれる。

 企画展の開催にあたり遺品を寄贈した遺族の郷倉伸人氏が「スケッチや下図などはひとに見せるものではない、というのが千靭・和子が生きた時代の価値観でした。このことが私にとって遺品の寄贈をためらわせてきましたが、勉強した足跡を人さまに赤裸々に見せる恥より、作家として真摯に日本画と向き合おうとする姿を皆さまに感じ取っていただくことのほう意義があるのでないかと思うようになり、遺品を寄贈することとしました。美術芸術は作家が他界し、ときを経ることではじめてその芸術的価値を安定させることができると言われるが、遺品が伝える息遣いを上手にプロデュースして、千靭・和子親子二代にわたる、芸術的価値を高め、富山の宝として育てていってほしいと祈念しております」とメッセージを寄せた。

 11月27日まで。観覧料は一般310(団体250)円、65歳以上または障がいのある人は150(120)円、中学生以下無料。