【新湊観光船】船の位置・運航経路リアルタイムで把握 GPSで安全対策強化
今年4月の北海道知床半島沖合の観光船遭難、沈没事故を受けて、観光船運行業界では一層の安全対策と危機管理の徹底が求められるなか、富山湾と射水市の運河「内川」でクルーズ観光する新湊観光船(射水市、社長木村龍彦氏)はこのほど、船舶の位置情報をパソコンやスマートフォンの地図上で一元管理できる衛星利用測位システム(GPS)を県内業界に先駆けて導入した。
同社は4艘の小型船を保有し、「海の貴婦人」といわれる大型練習帆船海王丸が係留されている海王丸パークを起点に富山湾からの内川12橋巡りや、季節のイベントに合わせたクルーズを運営している。小型船には船舶安全法の小型船の規則が適用され、このうち岸に近い限定した海域だけを運航する船は比較的規則が緩やかだが、同社はこれまで、トラブルでエンジンが停止した場合に備えて救助船を自社保有し、漁船と救助要請の契約も結んでいるほか、携帯電話による電話通信、トランシーバーで50分の間に2カ所で定期連絡するなど社内規定による安全対策をとってきた。

小型・軽量のGPS端末(右)と位置情報が確認できるスマホ画面
今回導入したのは、ソフトウエア開発のビット・パーク(本社東京、社長野口修氏)が開発した小型GPS端末。重さ約25.5グラム、サイズ38.5×47.5×11.85ミリ と小型軽量で、装着した管理者や関係者のスマートフォン、管理運営している事務所のパソコンの画面に、船の位置が最小3分から1分ごとにリアルタイムで表示され、運航経路の軌跡も確認できる。
万が一、緊急事態が発生した場合は、GPS端末のボタンを長押しすれば登録したメール通知先に緊急メールが送信されるほか、あらかじめ設定したエリア内への侵入、離脱にも連動してメールが通知され、管理者に知らせることができる。
またGPS端末は各船舶とID番号で紐付けられ、複数の船舶の位置情報も画面上で一目で把握でき、個別の船舶の運行軌跡と画面を切り替え表示できる機能も備えており、観光船の監視態勢を強化したことによって安全体制をより高めた。
コロナ禍で減ったクルーズ観光需要はここにきて回復傾向にあり、同社では夏のシーズンを迎えて乗客に安全第一で安心して楽しめるクルーズを提供していきたいとしている。