韓国財閥の対北事業の展望(2)4大財閥の南北協力事業の動向

北朝鮮の主要港湾の荷役能力

 北朝鮮の主要港湾の荷役能力をみると、西海(ソヘ)には最大港湾である南浦港(ナムポ)港(1,070万トン)、海州(ヘジュ)港(240万トン)、松林港(160万トン)があり、日本海側には清津(チョンジン)港(800万トン)、興南(フンナム)港(450万トン)、元山(ウォンサン)港(360万トン)、羅津(ナジン)港(300万トン)、先峰(ソンボン)港(300万トン)などである(図表8)。羅津港が特別に高い荷役能力を保持している訳ではない。

図表8 北朝鮮の主要港湾の位置図
資料 : 聯合ニュース(2018.7.6)に加筆・修正

 このように北朝鮮の港湾施設はかなり脆弱であり、とくに西海に面した北朝鮮最大の貿易港・南浦(ナンポ)などの港湾では、干満差が大きく水深が浅いうえに、大同江(テドンガン)からの土砂が堆積し、浚渫から始めなければ初期の荷役能力を発揮することは出来ないといわれている。

 日本海側の羅津(ナジン)、先峰(ソンボン)、清津(チョンジン)も埠頭面積が狭いうえ老朽化が激しく、北朝鮮が日・韓・中・露との物流ネットワークを構築するには大きな障害である。しかも羅津港は3つの埠頭を持つものの、1号埠頭が中国企業、2号埠頭がスイス、3号埠頭がロシアにそれぞれ10~50年間の使用権を与えており、今後、物流拠点として機能していくには制約が多い。

 反対に羅津港の場合、埠頭を中国、スイス、ロシアに使用権を与えていることが、北朝鮮の外国企業との取引の接点として、すでに機能しているとも考えられる。外国との業務経験を積んでいるとすれば、北朝鮮の非核化が現実となった時、南北経済協力から外国資本との提携など、他の港よりもインフラ整備が先行する可能性がある。

 羅津港の場合、制約条件が多いものの期待値が大きくなっている理由は、南北鉄道・道路連結事業において「東アジア鉄道共同体」という北東アジア多国間協力プロジェクトの中でも高い位置づけになっていることが挙げられる(図表9)。

図表9 東アジア鉄道共同体構想
資料 : ハンギョレ(2019年2月22日)に加筆・修正

 2021年8月、南北鉄道連結事業が現実に動き始めた。SKエコプラントが、南北交流協力の単線電車路線である江陵(カンヌン)~猪津(チェジン)間110.9キロのうち、第4工区(総延長22.4キロ)の建設工事をコンソーシアムにより受注した(図表10)。受注金額は3,715億ウォン。設計と施工をSKエコプラントが一括して担当し、12カ月間の実施設計を進めた後、本工事に入る予定である。工事期間は着工後、鉄道総合試験の運行期間を含めて64カ月と見込まれている。

図表10 SKグループの対北朝鮮の主な事業活動
資料 : 各種報道より作成

 南北協力の鉄道連結事業の一部とはいえ動き始めたことから、さらに北朝鮮の非核化により国際的な制裁緩和を受けられるようになるならば、SKグループが注目する羅津港の整備は、金剛山観光・開城工業団地とは異なる次元にあり、東アジア全域に影響を及ぼす起爆剤となる可能性がある。