【M&A】白えび専門店の水文 加工品質の高み目指し大東港運の子会社に

 港湾運送事業の大東港運(本社東京、社長曽根好貞氏、ジャスダック)はこのほど、富山市岩瀬の白えび専門店、水文(社長水上剛氏)の全株式を取得し、子会社化した。水上氏はそのまま社長として経営に当たる。取得価格は非公表。

 同社は畜産、冷凍食品などの輸出入貨物の取り扱いが主力事業。現在「独⾃の価値創造」を経営ビジョンに掲げ、コア事業を含む4つの事業強化を柱とする第7次中期経営計画を進めている。協業化による新事業などグループの全体成長もそのひとつに位置づけ、水文を子会社化したことにより富山湾の宝石と言われる「白えび」が新しく扱い商材に加わったことになる。

富山湾の宝石と言われる「白えび」

 白えびは今でこそ「ぶり」、「ほたるいか」と並び、富山を代表する魚介類として全国に知られるようになったが、水文は戦後間もなく港町・岩瀬に鮮魚店として開業し、その後兄弟で当時まだ認知度の低かった白えびを日本で初めて刺身に仕上げる食材として開発、普及に努めてきた歴史がある。

 白えび「学名Pasiphaea japonica(シラエビ)」は、水深200~300メートルの深海に生息し、国内では太平洋側近海の遠州灘、駿河湾、相模湾、海外では台湾やインド洋などに分布しているが、漁として行われているのは富山市漁協と新湊漁協の2カ所で、年間の漁獲量は平均400~500トン。とろりとした舌ざわりと食感、コクのある上品な甘さが魅力だが、体長が小さいうえ鮮度落ちも早く、しかもカラを剥いて「むき身」にするには手間がかかり、今も1匹ずつ手作業で行われている。 

 水文が扱う白えびは富山湾で水揚げされるうちのおよそ1割とみられ、創業の歴史とむき身の品質にこだわる白えび専門店として県内や都心の和食料理店、寿司店などに市場を開拓、3代目となる現社長が引き継いでいる。近年はレシピもさまざまに広がり、西洋料理などにも使われるようになった。

 「食品衛生法」が2018年に改正され、猶予期間を経て2021年6月から食品の製造・加工、調理、販売などを行う従業員50名以上の事業者を対象に、製造工程を継続的に監視し、記録を残すことで問題のある製品を未然に防ぐ安全性確保手法「HACCP(ハサップ)」による衛生管理が義務化された。  

 水文の従業員は27名で現在対象外にあるが、大東港運の傘下に入ったことで畜産、冷凍食品などを扱う同社の持つ管理ノウハウと販路をいかすとともに「加工技術を高めて需要の増大を図り、よりクオリティーの高い商品を提供するためにもHACCPに基づく衛生管理体制を確立しておきたい」狙いがある。

 大東港運は「特色ある富山の白えびを最高のブランドとして育て、付加価値のある事業につなげていきたい」(荻野哲司副社長)としている。