【日本学士院賞】川人光男氏(高岡市出身)が受賞 精神疾患に最適な個別治療を提供
学術上特に優れた研究業績を顕彰する日本の学術賞としては最も権威ある日本学士院賞の2022年度の受賞者に、富山県出身で国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報通信総合研究所長の川人光男氏(写真)が選ばれた。112回となる今回は自然保護分野の日本学士院エジンバラ公賞1人を含む計10人が受賞した。
川人氏の受賞テーマは、「計算論的神経科学による脳機能の解明とブレインマシンインタフェース(BMI)の開発」で、脳科学と人工知能分野の境界領域にあたる計算論的神経科学。小脳内部モデルの神経回路をヒト型ロボットに組み込んでロボティクスと神経科学を統合した新しい計算論的神経科学の研究分野を作り出し、人の体に負担をかけず、自然に考えただけでロボットを思い通りに制御する非侵襲脳活動計測によるBMIの開発に成功した。
従来は症候に基づいた診断が中心だった精神疾患において、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)による客観的な診断技術によって患者ごとに最適な個別治療を可能にし、精神疾患の診断と治療に新たな道を開いた。
2017年には創薬支援にも活用できるこの技術を実用化するベンチャー企業「XNef」を起業、社長(CEO)に就任。脳神経科学や人工知能の研究成果を精神疾患や心の不安の診断・治療に役立てることで社会貢献を行っている。
川人氏は1953(昭和28)年11月高岡市生まれ。1976年東京大学理学部物理学科卒業。81年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。大阪大学基礎工学部助手、講師などを経て88年ATR視聴覚機構研究所主任研究員。2003年ATR脳情報研究所所長、04年ATRフェロー、10年より現職。06年朝日賞、09年大川賞ほか受賞歴多数。著書に「脳の情報を読み解く―BMIが開く未来」(朝日新聞出版)など。2006年に富山県立大学特任教授に就任したほか、金沢工業大学客員教授などを務める。