【富山市公設地方卸売市場】PPP(公民連携)で富山市公設地方卸売市場再整備へ
富山市公設地方卸売市場の建て替え事業が2月25日、始まった。1973年5月に富山市掛尾の現在地に全国で66番目の中央卸売市場として開場されてから約半世紀の経過とともに施設は老朽化し、耐震への対応など抜本的な対策が検討されてきた。
全国の卸売市場では農水産物の生産・消費量の減少で取扱量が減り、さらに流通システムの変化や卸売市場を通さない直売所が増えるなど市場の卸売業者、仲卸業者の経営は厳しくなっている。
青果、水産、花きを取り扱う同市場も例にもれない。取扱量は、青果がピークだった1992年度の約半分、水産物は83年の約3分の1にまで減少している。この10年(2010~2020年度)の推移でみても、取扱量は青果43,323トン(2020年度)で、13%減少。水産10,387トン(同)で38%減少、花き1,227万6,000本(同)で28%減少し、いずれの部門も落ち込みに歯止めがかからない。また卸を除く仲卸業者の数も10年余りの間に青果は13から10に、水産は10から5に半減した。
こうしたことから富山市は、18年に施設全体をコンパクト化することにより生じる余剰地を有効活用する市場の再整備基本計画を策定、公表した。事業者が市場や民間施設を建設し、市が賃料を支払って市場を運営するPPP(公民連携)方式による再整備とし事業提案を募集した中から、事業支援の代表企業に大和ハウス工業を選定し、2月25日に本体工事に着手(花きは除く)した。

富山市公設地方卸売市場再整備事業竣工イメージ
敷地面積は約11万8,000平方メートル。市場敷地全体に約30年間の事業用定期借地権を設定し、市場施設と商業施設に区分けし、各2階建ての青果、水産棟、3階建て関連店舗・事務所棟の他、余剰地にスーパーマーケットやホームセンター、大型家具店など商業施設を含め6棟の建物(延べ床面積約3万3,900平方メートル)を3期計画で建設する。青果棟は2023年1月、水産棟は2024年6月の完工を目指し、商業施設は2025年5月に着工、3年後の2026年2月には新市場がオープンする予定だ。
同社は食品工場や冷凍・冷蔵倉庫など数多くの食品関連施設を手掛け、食品工場では年間約30件を請け負い、現在までに約900か所で建設してきたという。また物流施設は、創業以来3,000棟以上を開発。食品や生活必需品など多種多様な業種のニーズにこたえるため、常温・冷蔵・冷凍など各種食品の管理に対応できる施設や、⾷品の安全性をより⾼める⼯程管理システム「HACCP(ハサップ)」に対応できる施設を提案してきた。
同社が公設卸売市場の建て替え支援事業を手掛けるのは今回が初めてで、富山市公設地方卸売市場の整備事業を契機に、食品施設や物流施設など生鮮食品を取り扱う施設の開発実績とノウハウをもとに全国各地の行政が公募する卸売市場の再整備事業を新たに展開していくという。