【2021年グッドデザイン賞】応募件数、受賞件数とも過去最多 富山県関連で18件受賞

 公益財団法人日本デザイン振興会が主催する2021年度グッドデザイン賞に、富山県関係から18件が受賞した。同賞はデザイン性、機能性や社会に対する貢献度など様々な観点から高い評価を得た製品・サービスなどに贈られる日本で唯一の総合的なデザイン賞で、今回は5,835件の応募があり1,608件が受賞、受賞企業は1,101社といずれも過去最多となった。県関連で受賞したのは次のとおり。

朝日町=公共交通サービス「ノッカルあさひまち」

 中心部から離れ移動手段が限られる地域に住む住民(主に高齢者)向けの新しい公共乗合交通サービス。住民ドライバー・マイカーという地域の遊休資産を活用することで運行経費を最小限に抑え、住民同士の助け合いの気持ちをカタチにした持続可能なシェアリングエコノミーを実現。地域コミュニティの繋がりの強化にも寄与する。

富山市=歩くライフスタイル促進アプリ「とほ活」

 歩いて健康に暮らすライフスタイルの実現に向け、「歩くきっかけづくり」のための歩くライフスタイル促進アプリの開発と、普及啓発ツールのトータルデザインによる一体的なブランディング。歩数や歩行距離、消費エネルギーがひと目で分かる歩数管理を備えるなど、様々なアプローチで住民の行動を促す設計がなされ、市が掲げるコンパクトシティ戦略を住民の行動側から支える。

岡部(富山市)ほか=劇場、遊び場、産業のための公共施設「ラポルテ五泉」

 新潟県五泉市の地域交流拠点として、地域文化活動の拠点劇場、地域産業の紹介・販売、親子の遊び場を一体化した複合公共施設。夏暑く冬寒い新潟内陸気候の地域にあって、外気接触面を最小化・高断熱化し、地場産木材を活用した伝統的木造小屋組の居心地の良い空間を提案、伝統産業のニット、織物を家具やサインに生かすなど、五泉の特徴ある要素を組み合わせている。

カジメイク(高岡市)=「サイクルモード レインコート」

 「番傘」に始まる創業100年近い歴史を持つ総合レインウェア・ワークウェアメーカー。レインコートに見えない、日常でも着こなせるスタイリッシュなコート丈スタイルで、自転車乗車での下半身への雨濡れと風によるバタつきを防ぎ、着脱式レインバイザーシステム(特許取得)で雨天時の視界をクリアにする。バイザーの収納・持ち運びのしやすさまで配慮されたデザイン。 

嵯峨商事(高岡市)=抗菌・抗ウイルス加工畳「エバーグリーン」

 温泉、旅館、料亭、飲食店で多用されている大建工業(本店南砺市)の自然素材の機械すき和紙でできた耐久性の高い基材を使った健やか表シリーズ畳に、畳業界初の感染症リスクを減らす特殊コーティングによる抗菌・抗ウイルス加工に成功、第三者機関のSIAA(抗菌製品技術協議会)の認証を取得した。内装材として23種類のカラーバリエーションを揃え、畳のデザイン性も高めた。

三協立山・三協アルミ社(高岡市)=「ロングバーハンドル角型(ラッチ付プッシュプルタイプ)」 と通路シェルター「ファイブフォート」

 ロングバーハンドルは、玄関ドアの構成要素の一部分として設置されたときの玄関全体の視点で形状、動作を再検証し、建物正面を部材に徹したミニマルなデザインとするため、シャープな角型をベースに、手の触れる部分は柔らかいR曲げを施して触感を高めた。通路シェルター(写真)は、高強度アルミ合金構造でスチール構造に匹敵する業界最大級の柱ピッチを実現、柱本数を減らし、中桟は無くしたこと、部品やねじの露出をさけ、竪樋も内蔵するなど、シンプルな外観が評価された。

スギノマシン(魚津市)=モジュール型精密部品洗浄機 「JCC-Module」

 自動車、建機、二輪、航空機などの構成部品を精密に高圧洗浄、超高圧水バリ取り、真空乾燥まで完結できるモジュール機。ワークの回転軸とノズルの上下・左右の3つのサーボ軸が同期して動く新開発の「スイング狙い撃ち洗浄」(特許出願済み)により、穴に対して洗浄水を常に垂直に噴射し、短時間で高精度な洗浄・乾燥が可能となった。作業者の対面箇所にブルーグリーン、軽整備の箇所をホワイト、重整備の箇所をダークグレーの配色とすることで、作業者中心の工場・職場環境を実現。

タカタレムノス(高岡市)=ウォールクロック「RIKI RING CLOCK」

 仏具製造の個人創業から黄銅生型鋳物及び漆塗による時計枠の製造を契機に鋳造技術を活用したデザインクロックの自社ブランド化と開発などを手掛ける。受賞作品は、日本のモダンクロック黎明期を牽引してきた渡辺力の最終期1981年発売モデルの復刻品。メガネ針や輪形指標という装飾的な時計言語と機能美との絶妙なバランスで、シンプルでありながら存在感を放っている。時計枠は高度なアルミ鋳造技術を活用、高級感と美しさを後世に伝え残す取り組みを目指した。

田中精密工業(富山市)=荷物を載せた台車のまま運べる運搬パレット「トラパレ」

 金属加工の現場では、荷物を何十箱単位で台車からパレットへ載せ替え、フォークリフトで運搬後、再びパレットから台車へ載せ替える重筋作業が常態化している。この作業フローを再デザインし、4つの台車を一纏めにして保持するフレームを開発。台車の車輪が浮き上がる昇降機構を設計し、数百kgの荷物を保持してもフレームにかかる負荷を小さくして手で運べるようにし、作業者の負担を大きく改善した。

ナガエ(高岡市)=室内用物干し「hoss NAGAE 室内用物干しsen」、「同 窓枠用tao」、「同 壁面用fuu」と避難所用簡易間仕切り「ナガエ避難所間仕切り」

 室内物干しは、洗濯物の室内干しが増えている昨今、限られた空間を有効に活用しながら快適な洗濯物干し空間を提供し、さまざまな知恵が反映されたデザインとなっている。間仕切りは、利用環境・状況に応じた柔軟性を持ち合わせ、シンプルな部品構成、直感的な組み立てやすさ、軽量で場所を取らない備蓄体積など、そのアイデア、機能性、品質において高い評価を得た。

能作(高岡市)=手・指用副木「へバーデンリング」

 手指の第一関節を固定するための医療機器。創業から100年を超える鋳物メーカーの能作が、容易に曲げることができ形状が戻りにくい錫の特性を生かし、約3年をかけて商品化。整形外科医と共に臨床試験を行い、女性が主に使用することを想定して指輪のようなデザインを採用し、アクセサリー感覚で装着できる。指の太さや変形に合わせてサイズ調整でき、水に濡れても安心で、抗菌性も兼ね備えている。認知度の低いへバーデン結節自体を世に伝える役目も果たす。

葉月(高岡市)+濱田修建築研究所(富山市)+グリーンノートレーベル(射水市)=宿泊施設「民家ホテル 金ノ三寸」

 銅器製造元であった四津川製作所が伝統産業復興のために高岡銅器発祥の地、金屋町に空き家だった2棟の町家をリノベーションして、工芸品を見る、触れる、使える、魅力を感じ取られる民家ホテルを立ち上げた。鋳物工芸を身近に感じられるギャラリーを兼ねた一棟貸切の宿。金屋町を拠点に伝統工芸品を制作している職人の工房とも連携、宿泊客に工芸体験等をしてもらうことにより職人たちがエンドユーザーと直接触れ合い、使用者からの意見を得られるようにするなど、アイデアとコンセプトが評価された。

dot studio(富山市)=長屋集合住宅「花水木ノ庭 広場路の長屋」

 富山市中心市街地から徒歩3分の花水木通りに面し、店舗とシェアスペースを併設した4住戸の長屋。車路を建物内に引き込み、シェアスペースと一体で利用可能な駐車スペースを設けている。住民同士の交流スペースでありながら、イベント時には地域外の来街者を迎える会場ともなる。各住戸はテラスを持った戸建て住宅のような作りにし、落ち着いた生活も実現。地域のコミュニティと地域外から来るひとの滞留のきっかけとなるエリアを目指す。

YKKAP=エクステリア商品シリーズ「プリュード フレームユニット」

 自分らしい空間づくりを楽しむユーザー向けの、外構デザインのアクセントとなる門まわり中心のアイテム。フレームをユニット化することで施工作業を軽減し、高い意匠性を実現する。敷地内の上下・奥行に立体感を創造し、透け感のあるフレームは植栽と調和して、住宅外観を引き立たせる視覚効果も生む。街並全体の緑化にも貢献しながら施主がイメージする外構計画の名脇役となるシステムに徹している点が評価された。

大賞受賞の「分身ロボットカフェ」に川田グループが協力

 今回、グッドデザイン大賞に選ばれたのは、オリイ研究所(東京、社長吉藤健太朗氏)の「分身ロボットカフェDAWN ver.βおよび分身ロボットOriHime」。ALSなどの難病や重度障害で外出困難な人々が分身ロボット「OriHime」「OriHime-D」を遠隔操作して働く常設実験カフェとして、2021年6月、東京・日本橋にオープンした。

 常設実験店には川田グループが協賛・技術協力しており、「OriHime」、「OriHime-D」による接客サービスのほか、川田テクノロジーズ(本店南砺市、社長川田忠裕氏)の子会社・カワダロボティクスが開発・販売するヒト型協働ロボット「NEXTAGE」を組み合わせた分身ロボット「テレバリスタ OriHime×NEXTAGE」 が導入されている。

 「テレバリスタ 」は、ALSを発病したため仕事を断念していた元バリスタの「もう一度、お客様の好みに合わせてコーヒーを淹れたい」という希望を叶えるため、オリィ研究所と共同で開発したもので、実験店は「動けないが働きたい」という意欲ある外出困難者たちの雇用を生み出し、新しい社会参加の形を作る画期的な試みとして注目される。