【中越パルプ工業】国内外から高い評価集める竹紙のオリジナルカレンダー 社会課題の解決と持続的な経営の両立へ

 中越パルプ工業(本社高岡市、社長植松久氏、東証1部)の竹100%の紙で制作しているオリジナルカレンダー「日本の彩」シリーズが、2021年版「全国カレンダー展」(主催:日本印刷産業連合会、フジサンケイビジネスアイ)で金賞と最高位の経済産業大臣賞を受賞したのに続き、3月にドイツで開かれた欧州最大の国際カレンダー展「グレゴリー・カレンダー・アワード」でも銅賞を受賞し、国内外で高い評価を受けている。

 受賞したのは「暦二千二一年~日本の彩 2021年 竹久夢二の意匠」(サイズ:380mm×520mm)。美人画で知られ、グラフィックデザイナーとしても優れた作品を数多く残している夢二が手掛けた書籍の装丁や雑誌の表紙など、大正ロマンを彩る、なつかしくてモダンな夢二グラフィックの世界を表現している。

 「日本の彩」シリーズは、制作を始めた2008年版以来、円山応挙や狩野永徳、伊藤若冲といった日本を代表する画人や、京友禅の絵師の優れた画法を取り入れ、毎年趣向を変えながら和の美しさや四季彩々を表現していることが評価され、5年に1度の最高位「内閣総理大臣賞」を含め14年連続で大賞を受賞する常連作品だ。

 グレゴリー・カレンダー・アワードは1950年から開催されており、71回目となる今年は世界中から600点の応募があった。日本からは「全国カレンダー展」の上位入賞作品63点が同アワードの「日独交換カレンダー展」に出品され、金賞1点、銀賞2点、銅賞3点、特別賞1点が選出された。同社の銅賞受賞は2009年に続き今回で5回目となる。

 同社のオリジナルカレンダーは文化的に高く評価されるだけでなく、カレンダーの用紙に日本の竹100%の竹紙を使っている点が特筆される。

 かつて竹は食材や様々な生活用品の材料として日常生活で利用されてきたが、生活様式の変化、竹製品の代替品や安価な輸入製品の出現により竹生産者の栽培意欲喪失を招き、放置・放棄されたままの竹林が増えている。

 全国の竹林の4割を占める九州にあって、竹林面積全国第1位の鹿児島県の川内市に工場を持つ同社は、間伐された竹の利用を地元から相談されたことをきっかけに、地域の未利用バイオマス資源として活用することになった。

 産業利用のためには竹の調達、加工方法などさまざまな課題があり、地元大学との産学共同など多くの試行錯誤を重ねた。1998年より製紙原料としての竹紙に取り組み、2009年には竹100%の紙を製造販売した。国産竹100%の紙は強度があり、独特の風合を持つ。現在、ノートや書籍、雑誌、封筒のほかカレンダーなど多様な製品を生産している。

 全国で地域の竹資源の利用促進への取り組みが広がっているが、経済的に成立している例は少なく、事業活動を取り巻く環境は年々厳しくなっている。国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、今年4月に行われた気候変動サミットでは、新たな目標として、わが国の2030年度の温暖化ガスの排出量を2013年度比で46%削減すると発表された。社会課題の解決と持続的な経営の両立を目指す同社の取り組みは、地域資源を活用した新しいビジネスモデルとして注目される。