【YKK不動産】パッシブタウン第4期街区着工 地元の木材活用した保育施設でゼロエネルギー実現へ

第4期街区完成イメージ図:建物の側面の一部を「く」の字にして、気温が下がる冬場の朝に多くの日射熱を得られるようにしている。

 YKKグループのYKK不動産(本社東京、社長小林聖子氏)は4月14日、黒部市三日市で進めているパッシブタウンの第4期街区を着工した。

 パッシブタウンは、黒部の自然エネルギーを最大限に活かしたローエネルギーのまちづくり・住まいづくりを提案する取り組み。第1~3街区では集合住宅の建築を進めてきたが、第4街区では第1街区商業棟の事業所内保育施設「たんぽぽ保育園」を移転建築し、新しいコンセプトの下で子どもたちが健やかに成長できる環境を整える。従来0~2歳の15名だった受け入れ園児も30名まで増える。

 敷地面積3,168平方メートル、建物は木造平屋建て、延べ床面積約470平方メートル。2022年3月完成・開所予定で、総合設計は田口知子建築設計事務所。環境はスタジオノラ、設備は竹中工務店、ランドスケープは設計組織PLACEMEDIAがそれぞれ設計し、施工は地元の平野工務店が担当する。事業費は3億5,000万円。

 パッシブタウンでは初の木造建築で、地元の新川地区の木材を活用し、耐火性能の高い燃え代設計を採用する。柱や梁などの構造材が見える大屋根をいただいたひとつながりの大空間を実現し、保育士がどこからでも見守ることができる。

保育園の内観:手前から奥へと少しずつ床高が上がっていき、風や光が多方向から入る、ひとつながりの保育空間を展開

 パッシブデザイン、高性能外皮によるエネルギー抑制と太陽光発電によりZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)達成を目指す。自然通風と機械換気で施設を利用する子どもたちに新鮮な空気を届けつつ、室内の温熱環境維持とエネルギー消費量抑制を同時に実現する。学びの施設として初めて、計画段階より室内温熱環境などの年間変移を複数の指標を用いてシミュレーションした。また、YKK APが作成した窓の詳細データをBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)で活用することで最適な窓の位置・種類などを検証する技術を採用する。

 同日、YKK不動産の𠮷田忠裕会長、YKK APの八木繁和氏、設計担当した建築家らがオンラインで会見し、計画概要について説明した。会見で𠮷田会長は、「第4街区は自然の通風はもちろん、太陽光発電の利用や建築構造の工夫、地元産木材の活用など新しい試みを取り入れており、木造建築による省エネ性能を検証したい。海外での実情や建築家の選定も含め次の第5期街区以降に成果を活かしたい」と述べた。

日本建設業連合会第61回BCS賞を受賞したパッシブタウン第1街区

 パッシブタウンはYKKグループの社宅跡地36,100平方メートルをおよそ6期に分けて開発するという壮大なプロジェクト。2016年に建設した第1期街区と第2期街区は都市緑化機構の「第17回屋上・壁面緑化技術コンクール屋上緑化部門」で富山県初となる環境大臣賞を受賞、第3街区は第19回JIA環境建築賞特別賞を受賞している。この4月には第1街区が、「デザインや機能が優れていることにとどまらず、建築文化の高まりを感じさせる意欲的な作品」として日本建設業連合会が主催する第61回BCS賞を受賞するなど、地域と共同した持続可能なまちづくり・住まいづくりの取り組みが評価されている。