【日本エレテックス】ウイルス不活化効果のある導電繊維でハンカチ商品化 「着るワクチン」として防護服やPCR検査室の間仕切りにも

エレテックスⅡ
導電繊維など特殊繊維の開発を手掛ける日本エレテックス(本社富山市、社長建部則久氏)が独自に開発した耐久導電繊維材料「ELETEXⅡ(エレテックスⅡ)」に新型コロナウイルスの不活化効果が確認され、専門家からは「着るワクチンにもなり得る」との評価を得て、今後はユニフォーム(防護服)をはじめ、PCR検査室のカーテンや間仕切り、枕カバーなどにも商品展開していく計画だ。
エレテックスⅡは、アクリルの糸に電気抵抗の小さい銅イオンをコーティングした繊維で、抗菌性や防臭性、静電気除去性能を有する。奈良県立医科大学微生物感染症学講座の研究グループがエレテックスⅡを用いた生地を検証した結果、生地に付着した新型コロナウイルスが1時間で99.986%減少し、2時間で検出限界値以下になることが確認された。

抗ウイルスハンカチ「COVID GUARD」
昨年、同社の取引先である佐藤繊維(山形県寒河江市)がエレテックスⅡを使ったマスクを製造、販売したところ、テレビ番組にも取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ。さらに石川県小松市の酒井商店が開発した抗菌・抗ウイルス作用を持つ特殊起毛撚糸「マジックスパン」を撚り合わせた糸を使い、抗ウイルスハンカチ「COVID GUARD」を商品化、クラウドファンディングサイトでの先行販売を経て近く一般販売する。
マジックスパンは保湿性と吸水性に優れ、柔らかな風合いをもつ。細かな起毛が接触物体のわずかな隙間に入り込み、ウイルスや菌を掻き出すのが特徴で、エレテックスⅡと一緒に編むことで吸水性を高め、肌ざわりがよく、起毛した細かな糸が汚れを掻き出すなどの相乗効果をもたらすという。また耐久性に優れ100回の洗濯試験でも抗菌性能が落ちないことも確認済みだ。
ハンカチは20センチ四方の袋状で、手袋のように装着して電車のつり革やドアノブを握ったり、マスクを入れたりするなど、様々な用途で使うことができる。一般販売は3月下旬ごろの予定で、価格は2,200円(税込)。カラーは藍鉄色、赤など4色を揃える。
日本エレテックスは1961年電気工事業者として創業。IH調理器具からの電磁波漏洩によるペースメーカーの誤作動を懸念する声を聞き、2005年から富山電気ビルデイング(本社富山市、社長山田岩男氏)の協力を得て電磁波遮断製品の開発に着手、強化化学繊維と金属を融合させた遮蔽材専用の繊維「イキソルメッシュ」の開発に成功。折り畳んで収納できる電磁波遮断ボックスとして大手電機・自動車メーカーなどに納入している。
その後も、カーボンをアクリル繊維の芯部に練りこんだ導電性短繊維「ソルファイバー」、今回の耐久導電繊維材料「エレテックスⅡ」へと続く、電気技術と繊維技術を融合させた世界的にも珍しい繊維を開発してきた。
新型ウイルス感染症では、医療従事者が防護服を着脱する際に服に付着したウイルスに触れて感染してしまう例が報告されている。エレテックスⅡを用いた防護服やユニフォーム、マスク、枕カバー、カーテンなどの商品化が進めば、感染症予防効果が期待できる。現在、新型コロナウイルス以外の多様な菌やウイルスに対する効果についても実証を進めており、「高い抗ウイルス効果の商品開発を通じて、社会貢献できればうれしい」(建部社長)という。