県内上場企業、第1四半期決算から見える2021年3月期見通し(1)
富山県内に本社(本店)を置く3月期決算の上場企業17社(金融3社を除く)が発表した2021年3月期第1四半期(20年4~6月)は、対前年同期に比べ4社が増収・増益(経常利益)となった一方で、2社が減収・増益(同)、4社が減収・減益(同)、7社が赤字に転落した。
構造改革を進めることにより落ち込みを最小限にとどめた企業もあるが、新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が停滞し、その影響を受けた多くの企業で厳しい業績となった。4~6月の状況を踏まえて第2四半期(7-9月)や通期見通しにどう影響するのか、10社は業績予想(うち1社は半期のみ)を開示したが、算定が困難として7社が見送った。
開示した10社のうち3社は2020年5月時点で公表した増収増益予想を据え置き、7社は減収減益を予想するも経常黒字を確保し、株主配当も継続を見込んでいる。
コロナ禍でも増収増益
第1四半期で増収・増益(経常利益)となったのはアルビス、朝日印刷、川田テクノロジーズ、日本製麻の4社。
アルビス
北陸3県と岐阜県に61店舗のスーパーマーケットを展開するアルビスは、3店舗の新規出店に加え内食需要の高まりで冷凍食品や総菜など生鮮品や衛生関連商品が好調で、営業収益を大きく押し上げた。いわば新型コロナウイルスの感染拡大が追い風となった格好。売上総利益率は29%と0.5ポイント向上し、営業利益で12.8倍、経常利益で4.7倍の増益となり、ともに過去最高を記録。業績予想は中間、通期ともに上方修正した。
朝日印刷
主力事業は医薬品・化粧品などのパッケージ印刷、包装機械や包装ラインシステムの企画、販売。インバウンド需要減速の影響を受けて化粧品向けパッケージが減収となったものの、医療用向けが堅調だった。2019年12月にマレーシアの印刷会社2社を子会社化した効果もあり、包装システム販売の売り上げは約3倍伸びた。京都工場西棟増設による費用の増加などで総利益率は横ばいだが、出張自粛などで固定費が大幅に減少し営業利益は1.8倍の増益だった。営業利益率は2.7ポイント、経常利益率も2.5ポイントそれぞれ改善した。
2021年3月通期は、京都工場のパッケージ新ラインが本格稼働に入るほか、2020年7月に連結子会社のスリーエスを吸収合併し、包装システム販売事業の強化、経営資源の集約を図る。通期の収益見通しは、今後のコロナウイルス感染拡大・経済再開の度合いから想定される複数の受注・売上のシナリオに基づいて業績の上限及び下限を示したレンジ形式で開示。営業利益、経常利益ともに40~60%の減益を想定しているが、連結配当性向30%以上を基準に配当を継続する。
川田テクノロジーズ
鉄骨・橋梁トップの川田工業、川田建設を基幹事業会社にシステム建築・PC土木、航空事業、ロボティクスを手掛ける純粋持株会社。中堅ゼネコンの佐藤工業は持分法適用関連会社。
2020年度からの豊富な繰越高を抱えるのに加え、PC橋梁が床版(橋の一部分で、車や人、電車などの荷重が直接かかる床にあたる箇所)取替工事の更新事業で大型設計変更を獲得。またシステム建築の設計変更獲得と原価低減効果、新規受注工事も順調に進捗し期初に上方修正、売り上げは前年同期比12.8%増、営業収支は同11億3,000万円の赤字から営業利益3億6,900万円と黒字に転換。売上営業利益率は前年同期の8.4%から10.3%に採算性の改善が大きい。最終利益も17.1倍となった。
21年3月期は売上高1,150億円(前期比9.5%減)、営業利益35億円(同48.2%減)、最終利益25億円(同61.2%減)と5月時点の見通しを据え置いたが、6月末の次期繰越高は高速道路の床版大型更新工事や施工開始時期が期後半にずれ込んだ大型システム建築などを中心に1,242億3,700万円、前年比15.6%減ったとはいえ高水準にある。
同社のSCデッキ(鋼とコンクリートの合成床版)は1983年以来、現在まで床版面積にして130万平方メートルの実績を持つ有力ブランド。急速に進む道路橋、鋼橋等の高齢化に対応して補修・補強を含めた長寿命化、予防保全対策など社会基盤の整備強化が求められており、施工工事の進捗状況によっては業績修正もありそうだ。
日本製麻
黄麻袋・重包装用紙袋などの包装資材、「ボルカノ」ブランドのパスタ・レトルトの食品事業、タイで自動車用フロアマットの製造事業を行う。第1四半期としては4年ぶりに最終黒字となり、最終損益が6,900万円の黒字(前年同期は1,230万円の赤字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けてパスタやレトルト食品など家庭用の食品が大幅に増え、4-6月期のパスタ乾麺の販売が前年同期に比べて67%増加したのが寄与した。
売上高は穀物用の袋などを含む産業資材事業が前年同期比2.9%減の1億4,000万円、自動車用フロアマットを製造販売するマット事業は同7.6%減の4億2500万円、食品事業は業務用の落ち込みを埋めてなお38.5%増の4億2,500万円。
21年3月期の連結業績予想は配当を含めて引き続き開示を見送った。パスタやレトルト食品の売り上げ伸びに落ち着きがみられるほか、自動車用フロアマットはすでにタイの現地生産拠点の立て直しを図りコスト削減に対応したものの、相次ぐ操業休止や今後の生産動向による影響は定まらない。また穀物用の黄麻袋などの輸入も確定していないなどによる。