【三光合成】工場新設、増設に伴う投資負担吸収しきれず 20年5月期業績の予想を下方修正

 世界4極に拠点を持ち、車両・OA・家電向け工業用樹脂部品を金型から製造・販売まで手掛ける。2020年5月期中間の連結業績は自然災害に見舞われた納品先の操業再開、中国での車両部品の増収などで売上高は対前年同期比4.1%上回ったものの、国内外で増産態勢に向けた新工場、増設に伴う投資負担などから営業利益で約2分の1に、デリバティブ損失(1億1,200万円)の発生もあり、経常利益は3分の1に止まった。

 部門別売り上げでは成形品は1.4%減少したが、金型の受注はその前年並み水準までに回復、31.6%の増収となって売り上げ伸びを支えた。

 一方、セグメント別では欧州の12%減収をのぞけば日本、アジアで前年並み、メキシコと米国に工場をもつ北米は50%近い増収を確保したが、セグメント利益はいずれの地区も大幅減益となり、新製品の立ち上げ準備費用が予想以上にかさんだ北米は赤字だった。

三光合成九州

 通期見通しも下方修正した。売上高は期初計画を据え置き580億円としたが、設立間もない三光合成九州(大分県)、中国(湖北省)の武漢三樺塑膠有限公司での受注量が予想を下回り本格的な稼働にいたっていないうえ、EUから離脱する英国のほか、タイでの売り上げ減少が響き利益を押し下げる。期初見込んでいた営業利益は27億円から16億円に、経常利益は23億円から10億円に、純利益も15億円から7億円とした。ただ一株配当は年14円を据え置く。

武漢三樺塑膠有限公司

 2019年11月末現在の拠点数は、国内に成形7工場、金型2工場、海外12カ国に18法人となった。生産拠点のグローバルネットワーク化は事業規模の拡大と規模の利益をけん引してきた一方、ここ3~4年だけの設備投資は約140億円の規模になる。「これまでの経験上、新工場の収益化は立ち上げから少なくとも3年かかる。すでに稼働している工場を考慮すれば2年先には本格的に業績貢献が見込める」(黒田社長)という。

 新工場の早期立ち上げが急がれる中、工場の中でも2011年にエンジニアリング会社として開設したインドは2017年に金型、車両用の内外装部品メーカーに転換し、事業拡大に向けた投資に力を入れている拠点だ。

 工場のあるグジャラート州はホンダやスズキなど日系自動車メーカーが進出している。「現地では金型の7~8割、材料の鋼材は全量を、バンパーやインパネもほぼ全量を輸入しており、商機の拡大余地は大きい」だけに、受注単価は低いものの「金型メーカーとして信用の高まりとともに着実に売り上げを増やし、月次決算で黒字化してきた」(同)という。

 また三光合成UK(英国)では、英国のEUからの離脱で大陸に生産拠点を移す自動車メーカーの動きに対応、昨年チェコ(コリン市)に生産子会社を設立し、2021年春の稼働を目指して工場を建設中。ハンガリーに支店・生産工場を保有している三光合成UKの売り上げ減少は避けられないが、当面は両工場の操業を継続する意向。

 また蓄積してきた技術・開発・効率生産ノウハウを世界ネットワークに活用、他社に先駆けた金属3Dプリンタ技術、豊富なCAE解析、素材開発などを加速させ「収益源としてソフト事業に舵をきっていく」ことも経営方針とした。