【三協立山】独子会社、EV向け部材の納入を開始 国際事業、シナジー効果創出し22年5月期に黒字化
2019年11月中間連結業績は対前年同期比4.7%の減収となったものの経常増益で倍増となり、20年5月通期は期初の計画通り3期ぶりに最終黒字を計上する見通しだ。
売上高は、建材、マテリアル、商業施設、国際事業の4事業いずれも前年を下回ったが、アルミ地金価格の下落やエクステリア、サッシなど低頻度品や不採算商品の集約と価格改定、製販一体によるコスト低減へテコ入れを図り、「主力の建材事業の黒字幅拡大化が大きく貢献」(山下社長)し、全体の収益採算を押し上げた。売上総利益(364億3,700万円)は3.3%増益、同利益率で2.2%と2ポイント改善、営業利益は2.4倍(17億5,900万円増)を計上、利益率でも1.1ポイント向上した。
事業別の売上高・営業損益(対前年同期)は次の通り。
建材事業は消費税増税に伴う駆け込み需要及び反動減、前年度に発生したエクステリア分野での災害復興需要の収束などで売上高1009.3億円(1014.6億円)となったが、営業利益は34.6億円(6.6億円)に。マテリアル事業は米中貿易摩擦影響による一般機械分野の需要減少が影響し203.6億円(230.9億円)、営業利益は9億円(13.3億円)となった。
また商業施設事業はコンビニ、ドラッグストアなどの新規出店需要の減少で196.6億円(208.5億円)、営業利益1.4億円(1.7億円)。国際事業はタイでの業績は堅調だった半面、ドイツ子会社(バーデン・ヴュルテンベルク州)の売り上げ減少による操業率の低下から売上高209.7億円(245.6億円)、営業損益は赤字幅が前年同期(赤字8.8億円)から14.2億円に拡大した。
国際事業でシナジー効果創出へ
2020年5月通期は上期の流れを受けて期初に掲げた売上高、利益計画を据え置いた。主力の建材事業は、住宅分野で引き続き厳しい競争環境が続くが、2025 年までに目指す事業構造ポートフォリオに基づき「グループで60%を占める現在の建材の割合を2025年には40%に、将来的には商業施設事業に養液管理システムの運用実績をもつ植物工場、建材商品のメンテナンスなどを新しい周辺領域として組み込み、建材事業で45%程度を目指す。
また「マテリアル事業と国際事業を国内・海外の区分をなくして1つの事業とし、現在合わせて25%の構成比率を2025年には35~40%を目標に置く」(山下社長)計画だ。

バッテリーケースの納入が決まったフォルクスワーゲンのコンパクトEV
足元では、特に国際事業の伸展に期待がかかる。同事業は自動車・鉄道関連部材などの独子会社STEP-Gの売り上げが大半を占める。上期は欧州の自動車生産の低迷で売り上げが減少し赤字が増えたが、2019年2月新規の受注を獲得した独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループ向けバッテリーケースの納入が今春から始まる。
バッテリーケースは夏に発売予定される同社初のフルコネクテッド機能を備えたコンパクトEVの「ID.3」に採用され、「ピークの物量になるには 2~3 年先になるだろう。これとは別に成長が見込まれるEV市場に参入する複数の海外メーカーから新たに受注が決まっているものもある」(山下社長)という。
さらに、STEP-Gと国内マテリアル事業との連携により日立製作所向け鉄道用構造部材を受注した。受注額、納入先の国は非公表。国内マテリアル事業はアルミ地金の市況に左右されやすいだけに、生産工程の振り分けなどグループシナジーによる効果創出につなげる。アセアンでの事業展開を強化する企業は増える傾向にあり、もう一つの海外子会社タイメタルでの受注機会の増加も期待できる。
国際事業のこうした受注背景をもとに、2020年5月期における設備投資も全体で109億円の計画のうち海外子会社の設備増強などに44億円を充て、2022年5月期での黒字化という当初の目標を変えない方針だ。