【YKK六甲】働く意欲支える×障がい者雇用の未来 自分の意志で人生設計を描ける会社に 

倉本哲治社長

 特例子会社制度は、親会社やその企業グループの法定雇用率達成のための有効な手段となることから、多くの会社で障がいのある社員が特例子会社に集中する傾向にある。YKKグループでは、YKK(東京)、YKK六甲、YKK AP(東京)、YKKビジネスサポート(黒部市)、黒部クリーンアンドグリーンサービス(同)の5社各社で2014年以降、法定雇用率達成を継続しており、5社の雇用率は17年が2.39%、18年が2.35%、2019年は2.43%と、法律で定められた2.2%を上回る。各社それぞれが障がい者を雇用し、定着を図っている点が「YKKグループの強み」(倉本社長)だ。

 その中にあって、YKK六甲は特例子会社という枠組みを超えて人材と組織づくりの実践を重ね、障がい者雇用と定着の見本として、そのノウハウをグループに提供し続けている。2000年兵庫県第1回人間サイズの街づくり賞福祉部門受賞を受賞、04年神戸市市民福祉顕彰奨励賞、17年中央労働災害防止協会第3種無災害記録賞(3750日)、18年兵庫県労働局長表彰奨励賞を受賞しているほか、昨年は横浜市で開かれた全国産業安全衛生大会で事例を報告するなど、グループ内外から一目置かれた存在となっている。

 近年は障がい者雇用の間口が少しずつ広がってきているが、人材を募集しても事務系の仕事に流れる傾向が強く、製造業にはなかなか人が集まらないという悩みがある。「採用した社員は定年まで勤めてもらうことを前提にしているが、それでも年齢とともに体力的に仕事ができなくなる可能性も出てくる。そうした雇用環境に対応して、社員がロボットを動かし人工知能を利用した職場環境に整えていきたい」(小山工場長)考えだ。

 淡々と業務をこなす社員の姿は皆、居心地良さそうに映る。よくわからないから、なんとなく近づきがたいから、と遠慮するのではなく、「障がいという概念を取り払ってみてほしい。この20年で、YKK六甲を引っ張っていく人材は確実に成長した。これからも障がいのある人が自分の意志で人生設計を描ける会社を目指していきたい」と倉本社長。

 社屋は明るくすがすがしい。会社ができる限りのバックアップで支え、社員一人一人の持ち味を生かすことで、組織が活性化し、それが結果的には会社の成長、社会への貢献につながっている。その根底にYKKの経営理念があり、いまや特例子会社の枠を超えて先進的かつ着実に成果を示していると、今回の工場訪問で感じた。(本誌 佐野悠)