【YKK六甲】働く意欲支える×障がい者雇用の未来 自分の意志で人生設計を描ける会社に 

 設立当初は聴覚支援学校の卒業生やリハビリテーションセンターからの紹介で10人を採用した。2004年には自閉症、07年には精神障がいの社員も採用し、現在は、肢体不自由3人、聴覚5人、知的6人、精神4人、年齢は21歳から64歳までの18人が働いている。

新型4色機アニカラー

 工場内では、新しい4色機「アニカラー」をはじめ、様々な機械が稼働するが、その1台1台の操作を障がいのある社員が担う。アニカラーは、操作する人の器用さに左右されることなく誰でも簡単に操作ができるよう、また障がいの幅を広げて雇用でき、かつ印刷能力向上も図れるようにと、今年9月に導入したばかりのドイツ製の新型機械だ。

 操作するのは創業時からのメンバーで聴覚障がいの男性、デジタル化された画面を見ながら社内報の製作を行う。機械にはLEDライトやパトライトがついており、光ることで機械の異常などを知らせる仕組みとなっている。

機械に愛着、真摯に向き合う

 紙を切る断材機を操作するのは知的障がいで自閉症の男性だが、機械の前を行ったり来たりして興味のある様子だったことから任せてみたところ、今では工場長以上の腕前だという。

 操作方法は言葉による説明ではなく、正しい操作は〇、誤った操作は×といったように、〇と×を使って理解してもらった。「これは自分の機械」と認識してくれたことで、愛着を持ち、真摯に目の前の仕事に取り組んでいるという。

ラベルにシールを貼るロボット

 また、YKK APのサッシに張り付けるラベルも製作しているが、印刷したラベルの裏にシールを貼る作業はこれまで手で行っていた。ところが、枚数が増えるにつれて手作業では追いつかなくなり、ラベルにシールを貼るロボットを自社で開発。この「世界でここしにかないロボット」を扱うのは知的障がいの女性で、2台並んだロボットを1人で操作し、1日に4000枚から5000枚のラベルを製造している。

 このほか、YKK APの工務店向けメディアレポートや取扱説明書などは編集、印刷、加工を行った後、拠点ごとに仕分けし、出荷するまでの全工程を担っている。ファスナーの製品カタログに現物を一つずつ張り付けるのも全て手作業だ。

 サッシを取り付ける際に使うビスの袋詰めから出荷までの業務では、数えることが苦手な社員に対応した工夫を取り入れている。天秤の片方に決められたビスの本数をあらかじめセットしておき、もう片方の天秤に釣り合った分を袋に入れる方法だ。ビスの数や種類を間違うといったミスはこれまでゼロだという。

小山将志工場長

 このほか、グループ各拠点の書類を預かり、バーコード管理して広島県三次市の倉庫に送り、入庫、保管から出庫、破棄までを行う書類保管業務も行っている。

 小山将志工場長によると、採用する社員の前提条件は「素直な人」という。面接と実習を行い、親にも会社を見てもらう。実習で多少仕事ができなくても「会社に入ってから何とでもなる」という。「大切なのは、障がいのある人はこういう仕事でなければならない、といった考え方をしないこと。上司や同僚とコミュニケーションをとりながら、様々な仕事を経験するなかで、本人にあった仕事、さらにレベルの高い仕事に移っていく」ことを方針としている。