【YKK六甲】働く意欲支える×障がい者雇用の未来 自分の意志で人生設計を描ける会社に 

YKK六甲の工場外観

 多様な人材を積極的に活用するダイバーシティの取り組みを推進するYKKグループの中で、その「手本」と言われる会社が兵庫県にある。同グループ内の印刷業務を担い、今年で操業20年を迎えたYKK六甲(本社神戸市東灘区、社長倉本哲治氏=滑川市出身)だ。

 従業員26人、うち18人の障がい者を雇用し、設備などのバリアフリー環境の整備はもちろん、「働き方改革」が叫ばれるずっと以前から在宅勤務を導入するなど、ひとり一人の働きやすさに配慮しながら、ハードとソフトの両面で自立支援のノウハウを蓄積してきた会社である。

神戸市初の特例子会社

 YKK六甲は、標高931メートルの六甲山を仰ぎ見る神戸港内の人工島「六甲アイランド」にある。印刷業務のほか、書類保管業務、ファスナーサンプルやYKK APのカラーサンプル、樹脂サッシに貼るラベルの製作、施工用ビスの袋詰めなど100%YKKグループ内の仕事を担っている。YKKグループの100%出資により設立された特例子会社で資本金は2億円、2017年度の売上高は3.5億円。

 国や地方公共団体、民間企業は「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、一定割合以上の障がい者を雇用することを義務付けられている。法定雇用率は、国または地方公共団体の場合、雇用する労働者の2.5%、民間企業の場合は2.2%。これを満たさない場合は納付金が徴収され、この納付金をもとに雇用義務数より多くの障がい者を雇用する企業に対しては調整金が支払われたり、障がい者雇用に必要な施設設等への助成が行われたりしている。

 民間企業の雇用状況は2015年6月1日時点で実雇用率1.88%、法定雇用率を達成した企業の割合は47.2%、雇用者数は12年連続で過去最高を更新している。主に大企業が牽引しているのが実情で、中小企業での取り組みはまだ低調だ。

 障がい者の雇用は個々の事業主に義務付けられているが、事業主が障がい者雇用に特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たしていると厚生労働大臣の認定を受けた場合、その子会社の労働者は親会社に雇用されているものとみなして実雇用率を計算できるというのが特例子会社制度である。2018年6月1日時点で全国に486社があり、そのうち富山県内にはアルビスグリーンサポート(射水市、親会社はアルビス)、小林製薬チャレンジド(富山市、親会社は小林製薬)、エフ&エフ(砺波市、親会社はヨシケイライフスタイル)の3社がある。

社員の提案で設立

 YKK六甲は、YKKでファスニング事業に携わっていた社員の提案によって設立された。ある時、特例子会社の存在を知り、障がい者が自ら稼いで社会に貢献できる場をYKKグループ内にも作れないかとの思いを抱いたという。大阪府内にあった特例子会社に話を聞きに行ったり、YKK幹部らと相談を重ねるなどし、当時の社長吉田忠裕氏に設立を提言し、了承を得た。

 会社は1998年2月25日に設立され、翌99年4月1日に障がい者ら10人と、グループ内から出向した技術指導者を合わせた15人で印刷会社として操業を開始。同年5月に全国で71社目、神戸市では初の特例子会社として認定を受けた。