とやまの土木(20) 富山県で液状化について考える意味

富山県立大学講師 兵動太一 
はじめに

 昨年2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震をはじめ、地震大国のわが国では大型地震が頻発しています。地震によって起こる被害は様々ですが、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋地震における液状化現象は様々なメディアに取り上げられ、読者のみなさまにとっても記憶に新しいと思います。

 近年、富山県においては幸いなことに地震による特に大きな被害事例はありません。よく学生から、「富山県では地震が起こらないのに先生はなぜ液状化を研究しているんですか?」と聞かれます。2007年3月25日の能登半島地震で氷見や高岡で何点か液状化が確認されたものの、他の地域と比べて事例が圧倒的に少ないため、一般の方の認識も質問した学生たちに近いと思います。

 しかしながら日本海側の近隣他県では大型地震が発生し、甚大な被害を被っていることもあり、対岸の火事ではないことは想像にかたくないと思います。本稿では地震災害の中から前述の液状化現象についてクローズアップしてみます。

液状化とは

 一般の人たちが思う液状化は、地震が発生したのちに地盤があたかも液体状に見えるようになる現象ですが、実際には少し違います。液状化は以下の3つの条件を満たさなければ発生しません。

① 緩い砂質土層(砂質土地盤)であること。
② 地盤が飽和している(地下水位が浅く、対象地盤が地下水位より深いところに位置する)。
③ 地震動の強さが大きいこと(加えて継続時間が長い)。

図1 液状化のメカニズム (東京都 建物における液状化対策ポータルサイトより)

 図1に液状化のメカニズムの概要を示します。緩い砂質土層においては、砂粒子が絶妙なバランスで支持しあっています。土の中の隙間のことを「間隙」(かんげき)と言いますが、間隙内は飽和しているため水で満たされています。一度地震が起こると、間隙内の水圧が上昇し、砂粒子が支えあえなくなります。砂粒子の結合がなくなり水に浮いた状態になります。この時、地盤があたかも液体になったように見えるのです。上昇した間隙水圧は逃げ場をなくし、地表面に逃げようとします。これが液状化の時に見られる噴水や噴砂です。図2に液状化の噴砂の跡を示します。

図2 2016年熊本地震による液状化による噴砂跡(熊本県熊本市)

 しかし、液状化はこれに留まりません。砂粒子の比重は水より大きいため、沈下します。これにより元の地盤高よりも低くなるため、地盤沈下が生じ、建物や電柱が傾いたり、道路が陥没したり、地盤の中では埋設管が破損したりするわけです。

 また、中空の構造を有しているマンホールは、砂粒子同士の結合がなくなっているときに、そのまま浮き上がってしまい、砂の沈下が始まっても元の位置に戻ることができず、地面から突き出している状況をテレビなどで見られた方もいらっしゃると思います。

富山県における地震と液状化の発生リスク

 ここまでいろいろ説明しましたが、前述のように、なぜ地震の少ない富山県で液状化の研究をする必要があるのか? とまだ納得されない方がいらっしゃるかと思います。図3に文部科学省の地震調査研究推進本部事務局によるわが国における主要活断層の評価結果を示します。

図3 国内の主要活断層の評価結果 (文部科学省研究開発局地震・防災研究課地震調査研究推進本部事務局による)

 富山県で注目したいのは、砺波平野断層帯・呉羽山断層帯です。図4に砺波平野断層帯・呉羽山断層帯の詳細を示します。地震調査研究推進本部事務局の調査結果では30年以内の地震発生確率が3%以上であるSランクに指定されています。

図4 砺波平野断層帯・呉羽山断層帯 (文部科学省研究開発局地震・防災研究課地震調査研究推進本部事務局による)

 具体的には、砺波平野断層帯 (西部)においては、マグニチュード7.2程度が0~2%かそれ以上、砺波平野断層帯 (東部)においてはマグニチュード7.0程度が0.04%~6%、呉羽山断層帯においてはマグニチュード7.2程度がほぼ0%~5%の確率で発生するそうです。

 感覚は人それぞれで数値だけで見たら確率的にかなり低いと思われる方もいらっしゃると思いますが、これだけの規模の地震が起こるリスクが富山県にもあることを頭の隅に入れていただきたいのです。

 これのことを踏まえて、富山県における液状化リスクについて考えていきましょう。図5に富山・高岡地域における液状化しやすさマップを示します。このエリアは富山県においては、最も人口が密集している地域です。

図5 富山・高岡地域における液状化しやすさマップ
(国土交通省北陸地方整備局より一部加筆・修正)

国土交通省北陸地方整備局は以下の見解を示しています。

 「呉東地域(早月川から神通川)では、河川上流側の低地部に扇状地が広く分布し、背後には段丘と高山性山地及びその縁辺山地が分布しています。扇状地は主に締り具合の良好な砂礫で構成されているため、液状化の可能性は低いと想定されます。河川下流側には氾濫平野が分布し、締め固まっていない砂層と粘土層から構成されるため、液状化の可能性はあると想定されます。

 呉西地域(神通川から庄川)では呉羽山等の丘陵地が下流側に張り出ており、庄川沿いを除いて低地部の扇状地は比較的少なく、氾濫平野と海岸平野が分布しています。海岸平野は潟埋積性の平野であり軟弱な粘土層を主体としますが、地下水位が高く砂層が介在するため、氾濫平野下流域と同様に液状化の可能性がある範囲と想定されます。

 また富山新港周辺部の後背湿地と埋立地は、地下水位が高く締め固まっていない砂層を介在するため、液状化の可能性が高い範囲と想定されます。低地部には細長い旧河道と周辺よりやや高い自然堤防・微高地が分布し、締め固まっていない砂層が介在する場合があります。これらの地形分布域の一部は、液状化の可能性があると想定されます」(国土交通省北陸地方整備局 富山県内液状化しやすさマップより抜粋)

 南側に立山連峰を有しているため、太平洋側では見られない急勾配の河川を多く有している富山県ですが、河川下流においては太平洋側の一般的な河川を有するエリアと同様に、液状化のリスクがあることが分かると思います。

 富山新港エリアに関しては埋立地が多くさらに液状化の危険度が増しています。液状化危険度の低いエリアにおいても、地震時に液状化とは別の形で被害を被ることが考えられるので油断はできません(今回は液状化をテーマにしているため詳細は別の機会があればお話します)。

おわりに

 第1回目は、液状化のメカニズムと富山県における液状化リスクについて述べました。地震が少ない富山県においても液状化のリスクが大いにあることがお分かりいただけたと思います。実施工においては、全国のルールに基づいて行われるため、液状化対策が行われていると思いますが、本稿をきっかけに、なぜ対策が必要なのか読者のみなさまが考える機会ができれば幸いです。

参考文献
地震による液状化とその対策(2012):オーム社、52p、78-79p。

朝日新聞:http://www.asahi.com/special/070325/TKY200703250271.html、2007年3月25日
東京都 建物における液状化対策ポータルサイト:東京都、http://tokyo-toshiseibi-ekijoka.jp/index.html(2019年11月閲覧)
地震に揺らがない国にする地震本部(政府 地震調査研究推進本部):文部科学省研究開発局地震・防災研究課地震調査研究推進本部事務局、https://www.jishin.go.jp/(2019年11月閲覧)
富山県内の液状化しやすさマップ:国土交通省北陸地方整備局、http://www.hrr.mlit.go.jp/ekijoka/toyama/toyama.html(2019年11月閲覧)

ひょうどう・たいち

山口県出身。山口大学大学院理工学研究科博士前期課程修了後、株式会社錢高組、早稲田大学理工学術院、東京理科大学を経て着任。地盤工学、地盤防災学などを専門とする。