「ファッションワールド東京秋」展に県内企業も出展 注目企業による基調講演も
日本最大のファッション展示会「ファッションワールド東京 秋」ならびに「ファッション生産・素材ワールド東京 秋」が10月2日から4日まで、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催され、世界35カ国から1,050社が出展した。アパレル、バッグ、シューズ、アクセサリー、生地・素材、ファッションOEMの関連6展で構成され、有名講師などによる基調講演・対談も行われた。
富山県内から、アパレル展に小矢部市の繊維関連企業6社が中心となって組織するおやべ繊維ブランド化推進協議会、バッグ展に高岡市に本社を置くカジメイク、生地・素材展に黒部市に事業所を持つYKKが出展した。
おやべ繊維ブランド化推進協議会/ハトムギを活用したアパレル開発

おやべ繊維ブランド化推進協議会のブース
おやべ繊維ブランド化推進協議会は2017年に設立、市特産のハトムギを活用した「おやべ繊維」のブランド化を進めており、その第一弾として今回は世界で初めてハトムギ繊維素材を使ったナイトウェアや肌着、補正下着、ペットウェアなどヘルスケアシリーズを展示した。
事務局の富山県繊維協会の川端亀三郎常務理事によると、ハトムギは漢方では美肌・美白効果やアレルギー抑制効果があるといわれており、そのエキスを付着させた繊維製品の開発、製品化に取り組んできた。
コーナーには協議会参加企業のエイゼット、小矢部繊維工業、ゼフィール、ミヤモリ、ランブール各社の主力製品も展示。ブランド化推進協議会では、引き続き、快適生活をサポートする第2、第3のヘルスケア繊維の商品開発に取り組んでいく。
カジメイク/画期的な機能を取り入れたレインスーツ

バッグ展に出展したカジメイクのブース
レインウェアで国内トップの約60%の販売シェアをもつカジメイクは、バッグ展の会場にブースを設け、自社ブランドの「ピラルク」「フォーキャスト」の新アイテムと、来春発売予定のレインスーツ(雨具)「ピラルク・レインシェイカー」を出品。バッグは、「3年前から新カテゴリーとして本格参入し、アイテムを順次増やしている。現在当社の売り上げ全体の約5%だが、2~3年先には比率を20%にまで引きあげたい」(IDI事業部佐久間裕司氏)と、レインウェアに次ぐ事業部門に育成中。
「ピラルク・レインシェイカー」は、これまでにない画期的な機能を取り入れたレインスーツとして注目されている。正面から来る雨粒を防ぐレインバイザーと呼ばれる雨用のサンバイザーを標準装備。また、フードとボディ部分を分離し、独自開発(特許取得)の回転式フードを装着することにより、首を振ったときのねじれがなく正面を見ているときと変わらない広い視野が得られる。さらに10,000㎜という耐水圧と5,000g/㎡/24hrの透湿性を備えていて、長時間の激しい雨の中で着用しても中はサラサラ、快適を保つことができるという。
「ピラルク・レインシェイカー」は10月16日にクラウドファンディングで先行販売、初日に300着以上を販売し目標の500%突破するなど大きな反響を呼んだという。
YKK/環境に配慮したサステナビリティへの取り組みを紹介
YKKはYKKスナップファスナーとともに生地・素材展に出展し、従来の環境商品に加え、商品ができるまでの過程をボードで展示。商品で実現する環境貢献を目指した「NATULON®」(リサイクルファスナー)、「GreenRise™」(植物由来ファスナー)、「ECO-DYE®」(水を使わない染色:写真)、環境に配慮したスナップ・ボタンなどのサステナビリティ(持続可能性)への取り組みを紹介した。
生地・素材展基調講演より
「クモの糸」で自然のバランスを元に戻す アパレルが担う役割大きい
生地・素材展の基調講演では、新世代高機能素材として注目されている人工合成クモ糸素材を開発したSpiber(スパイバー、本社山形県鶴岡市)の関山和秀取締役兼代表執行役と、共同研究開発を行うゴールドウインの渡辺貴生取締役副社長が「アウトドア、ファッションの未来」をテーマに対談、新素材開発までの苦労や今後の展開などについて話した。
強靭かつ柔軟なクモの糸の特性を活かした世界初の人工合成クモ糸繊維「QMONOS」の量産化に成功したスパイバーとゴールドウインは、2015年から研究開発に取り組んできた構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」を100%使用したアウトドアジャケット「ムーン・パーカ」を今年12月12日から数量限定で発売する。製品化という意味では第一歩を踏み出す年になり、ゴールドウインとの取り組みがようやく実を結ぶことになった。
大学発ベンチャーの関山氏は、環境、食糧、エネルギー問題など地球規模の課題に対してバイオテクノロジー、ベターサイエンスを使ってソリューションを開発していきたいという思いで研究に携わってきた。クモ糸を人工的につくるという着想を得てクモのDNAを解析、その特性を調べ、仮説を立て、設計、合成して材料の評価を何度も繰り返し調べた。
「自然界で何億年もかかって行われているプロセスを実験室で一つずつ積み重ねて続けてきた。研究をぐるぐる回していくことで素晴らしい材料にたどりつくことができる」(関山氏)
「開発当時はサンプルレベルの糸が少しあった程度で、本当に素材ができるのか疑心もあった。当時、ゴールドウインの役員全員が関山さんのところに行って説明を聞いたが、皆、感動して帰りのタクシーでは、やるしかない、みたいなムードになっていた」(渡辺氏)。
新発売する「ムーン・パーカ」は、主原料を石油などの化石資源に依存しない微生物による発酵プロセスでつくられた構造タンパク質を生成し、独自の加工技術により繊維化、紡糸、製織、生地加工などの各工程でテストを繰り返してきた。
「ムーン・パーカは数量限定で発売するということで、たくさんの方から応募をいただいている。製品はよりシンプルに、機能的で使いやすい形のデザインにしている。表側はブリュード・プロテインだが、中綿と裏地はまだそこまでのレベルのものが開発できていない。中綿はクリーンダウン、裏地はポリエステルを使っているが、将来的にはブリュード・プロテインで着やすいものにしていこうと考えている」(渡辺氏)。
スパイバーは構造タンパク質素材の量産化に向けた生産拠点とするタイのプラント整備を進め、2021年からの商業生産開始を目指している。環境負荷の低い素材であり、繊維をはじめ、樹脂、フィルムなど多様な素材への加工が可能で、「自然のバランスを元に戻し、今の環境を良くしていきたい。アパレルが担う役割は大きい」(渡辺氏)と締めくくった。