全国初、黒部市で在宅高齢者と地域サービスをつなぐ仕組みと地域の”ながら” 見守りの実証実験
黒部市社会福祉協議会(松井敏昭会長)は国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、日新システムズ (京都府)と共同で、スマートフォンなどICT機器の利用が難しい高齢者を対象にした「地域サービス創出」と「地域見守り」に関する実証実験を10月より開始した。全国初の試みで、地域福祉分野でのICT利活用を目指す。
高齢者だけの世帯や高齢者の一人暮らし世帯の増加にともない、高齢者の困りごと解決や支援者の負担軽減などにつながる仕組みを模索していた黒部市社協は、今年4月、NICTおよび日新システムズと三者協定を締結。黒部市内で行われている包括的な見守り体制「くろべネット事業」におけるICT利活用プロジェクトとして、下立と荻生の後期高齢者世帯(最大40世帯)を対象に3カ月間、実証実験を行う。
「地域サービス創出実証」では、簡単な操作で地域サービスとつながるICT機器を対象世帯に配布し、助けてほしい人と助けたい人をマッチングするほか、生活全般に関わる困りごとの解決や人とつながる機会、外出の機会を創出する。

高齢者とつなぐしくみにはカード型インターフェースを採用
在宅高齢者と地域サービスをつなぐ機器は日新システムズが開発。高齢者が病院の診察券などで扱い慣れたカード型インタフェースと直感的に操作できるボタンで構成され、開発には黒部市内の福祉関係者、利用者となる後期高齢者らも参加してきた。サービスの提供は黒部市社協と黒部商工会議所青年部、富山県生活協同組合が連携して行う。
高齢者が助けが必要な時に「買い物、宅配」「お助け隊」「家族」などのカードを機器にかざし、ボタンを押すだけで、カードに登録された企業や支援者、家族にメッセージが届く。メッセージが届くと担当者がお年寄りに電話し、相談を受け付ける。支援者側から、音声メッセージで「きょうはごみの日です」「公民館でイベントがあります」といった情報を配信することもできる。また、「元気だよ!」カー ドを用いて利用者自身が意思を示すことで見守り活動に参加することもできる。

高齢者とつなぐ仕組み
「地域見守り実証」では、地域にある車や建物などの社会資源を用い、業務用車両が普段の仕事をしながら見守り情報や電子回覧板の情報を受配信して、情報を地産地消する仕組みをつくり出す。
この実証実験にはNICTが開発した無線ネットワーク構築技術を用い、Wi-SUN(IoT 向け国際無線標準規格)とWi-Fiを融合的に活用した地域見守りプラットフォームを実現。近隣を偶然走行する業務用車両が、見守り対象世帯における外出頻度や社会的つながりの低下などを早期に把握して訪問型見守りサービスにつなぐ仕組みを導入している。また、社会福祉協議会からのお知らせを配信する電子回覧板サービスの実用性についても検証する。