【YKKグループ】環境配慮型集合住宅「パッシブタウン」の性能評価 居住者の7割以上が「満足」と回答

パッシブタウン全景:手前から第3街区、第2街区、第1街区

 YKKグループのYKK不動産(本社東京、社長𠮷田忠裕氏)が黒部市で整備を進めている、自然エネルギーを活用した住宅街区「パッシブタウン」のうち、第1街区から第3街区までの3つの集合住宅についてこのほど、快適性などを評価した「パッシブデザイン性能評価委員会」(委員長・井上隆東京理科大学理工学部教授)による調査研究結果が報告された。

 実測したエネルギー消費性能の評価に加え、居住者との意見交換を重ね、住宅に対する感じ方、考え方も総合的に評価するという世界的にも例の少ない取り組みで、3つの街区のエネルギー消費量の平均は、北陸の一般的な集合住宅の51.6%に抑えられ、アンケートでは居住者の74%が「満足を感じている」という結果が得られた。一方で、居住者の生活習慣や冷暖房の利用状況に配慮した設備システムの最適化が課題であることも分かった。

 パッシブタウン第1街区は新築の家族用と単身用住戸36戸が2016年3月に、第2街区は44戸が同年10月に、第3街区は社宅をリノベーションした単身用37戸(パッシブタウンBELS<建築物省エネルギー性能表示制度>評価で最高ランクの5つ星を取得)を17年6月にそれぞれ竣工。

 いずれも、過度なエネルギー消費に依存することなく、太陽光や風などの自然エネルギーを最大限に生かした「パッシブデザイン」を取り入れ、風力や太陽熱、地下水を利用した冷房、太陽熱を利用した給湯などを採用し、自然のエネルギーを可能な限り活用できる構造を採り入れて、電力・ガス・石油といったエネルギーの消費を極力抑えながら、持続可能な社会とライフスタイルづくりを目指すもの。

 パッシブデザイン性能評価委員会は、①前提条件の確認、②エネルギー消費量、③居住者アンケート、④室内温熱環境の4つの項目で16年7月より調査を開始。123の測定項目、389の測定点数から575万8239という膨大なデータを取得し、今年度末までに国内外の学会で45論文を研究成果として報告する。

各街区のエネルギー消費量(二次)実測値(2018年度)

 まず、①前提条件となる気象について、2000年と2017年、2018年の黒部の気象データを比較した結果、夏期は2000年に比べ、2度から3度程度平均気温が上がっている一方、冬期の気温はそれほど差がなく、年間の日射量は東京と黒部を比較しても1月と12月を除いてはそれほど変わらないことが判明し、「ふんだんな太陽の光を利用することが重要である」(八木繁和YKK  AP専門役員中央研究所主幹研究員)ことが分かった。

 ②エネルギー消費については、各街区とも北陸の一般的な集合住宅に比べて消費量は少ないものの、建築外皮性能や設備、規模、住民のライフスタイルにより大きな差異が出ることが分かった。またエネルギー消費量は、運用改善と設計の変更により6割以上削減可能になるという。

居住者アンケート(2018年度実施)

 ③居住者アンケートと④室内温熱環境については、高断熱、高気密性により冬場は居住者の満足度が高かった一方、近年の猛暑による影響もあり、夏場の住環境への課題が明確となった。夏期は全室にエアコンを設置し、通風にも配慮した第2街区が、冬期は床暖房と壁パネルによる放射暖房システムを用いた第1街区の住宅の評価が高い結果となった。

 また各住戸にタブレットを設置し、温度の見える化や望ましい環境調整行動のメッセージを伝えるなど、適切な情報提供が結果的に省エネと居住者の満足度向上につながることも分かった。

 エネルギー消費量に加え、居住者が判断しやすい1つの指標として、冷暖房を使用せずに快適に過ごすことができる「無空調期間」が活用できるという提言をはじめ、季節の特性や満足度を含めた評価が必要だとの意見も出された。

 これらの評価を受け、𠮷田社長は、評価委員会の活動が欧米などでも大きな話題になったことに触れ、「これだけ気象条件が変わってきた現在、住宅や構築物にはかなりのことが要求される。こういう技術が使える、こういう生活ができる、ということを示す挑戦をしていきたい。今回は採算性を考えずに性能評価をいただいたが、残る4~6街区の開発に当たっての課題テーマでもある」と話した。

 パッシブタウンは2025年までに全6街区、250戸を建築する予定で、同社では今回の報告を踏まえてコストも含めた条件設定を決めて、年内にも4~6街区のデザインを発表したいとしている。

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