ジェトロ地域・分析レポート:富山県における高度外国人材の採用に向けた取り組み

 外国人材の受け入れ拡大が進むなか、ジェトロはその実態と各地の取り組みについて分析レポートをまとめた。

 今年4月1日に改正出入国管理法が施行され、在留資格に「特定技能」が創設された。外国人材の受け入れ拡大は単に不足する労働力を補填するだけでなく、技術革新や新商品・サービス開発、海外需要取り込みによる収益拡大にも資すると期待されている。

 レポートでは、外国人材を上手に活用しながらビジネスを拡大する企業や外国人材を積極的に受け入れる地域の取り組みを紹介。その一例として高度外国人材採用に向けた富山県における取り組みを取り上げている。

技能実習の割合が高い富山県、高度外国人材の採用が課題

 富山県の有効求人倍率(2018年度平均)は1.97倍と、全国平均(1.62倍)を0.35ポイント上回っており、正社員に限ってみると全国平均との差はさらに拡大する。もともと新規卒業者の県内就職率が高く、地元で人材を確保することが限界に近づきつつあるため、県外からの就業者確保に加え、高度外国人材の採用・定着を図る必要性が高まっている。

外国人労働者数(在留資格別)の比較(全国・富山県)(単位:人、%)

 2018年10月末時点で、富山県内では1,751事業所に計10,334人の外国人が働いているが、「技能実習」の割合が50.4%で、全国平均より29.3ポイントも高い。一方、「専門的・技術的分野の在留資格」の割合は9.6%と、全国平均より9.4ポイント低く、高度外国人材の採用が富山県の課題となっている。

 北陸環日本海経済交流促進協議会(北陸AJEC)の調査報告によると、北陸3県の大学の留学生数の全国比率は北陸の外国人労働者数の全国比率に比べて少なく、北陸の留学生の就職率も全国より低い。同協議会は、留学生と企業の間に、(1)就職・採用の意識、(2)日本語能力、(3)業界・職種の3つのミスマッチがあると指摘している。

富山大学の留学生就職支援の取り組み

 政府は外国人留学生の日本国内での就職率を現状の3割から5割に向上させるという目標を掲げており、富山大学においても留学生の就職支援を強化している。同大は2018年4月に「国際機構」を設置し、留学生に対する日本語教育や、就職・キャリア支援センターと連携した就職支援などを行っている。

 また、地元経済界との協力により、外国人留学生と県内企業経営者との交流会を2015年度から毎年実施しており、これまでに延べ19カ国・地域の留学生、延べ59社が参加している。

 富山県グローバル人材活用促進事業として、外国人留学生にントリーシートの書き方や面接対策、企業採用担当者や県内企業で活躍する外国人留学生のOB・OGによる解説・アドバイスなどの支援も実施している。外国人留学生対象の合同企業説明会・企業研究会では3カ月以上海外留学または滞在経験のある日本人も対象としており、県内企業にとって国際人材採用のためのツールとなっている。

 こうした取り組みが功を奏し、富山大学外国人留学生の国内就職は年々増加傾向にある。

富山大学留学生の進路状況(単位:人)

県や県内企業も留学・就学支援に乗り出す

 富山県は、2015年度からASEAN地域およびインドからの留学生に留学費用(渡航費、学費、奨学金など)を県と企業が2分の1ずつ負担する取り組みを行っている。留学生は原則として、県内の大学(富山大学・富山県立大学)の大学院で2年、その前に研究生として6カ月間留学する。県は受け入れ候補者の希望研究内容について大学と事前確認し、企業は当該留学生の在学中にインターンとして受け入れる。

 この取り組みの対象者は年間4~5人だが、2018年春に卒業した第1期生5人は全員、協力企業に就職するなど、着実に成果をあげつつある。現在も7カ国13人の留学生がこの事業の支援を受けているという。

 レポートでは、アルケー情報(富山市)、石金精機(同)、阪神ホールディングス(同)における高度外国人材の採用に向けた取り組みを紹介している。

 ソフトウエア開発を手がけるアルケー情報は、地方での日本人採用が年々困難になっていることから外国人材を積極的に採用。現在、高度外国人材が従業員12人の半数を占める。新たなビジネスの立ち上げや拡大に意欲を示す外国人材を活用することによって海外市場展開を本格化している。

 石金精機はベトナム進出を見据え、2011年、13年にベトナム人エンジニアを1人ずつ採用。2015年にはベトナム人技能実習生4人を採用し、2018年にベトナム法人設立にこぎつけた。6人全員がベトナム法人に勤務しており、工場長はそのエンジニアが務めている。

 医療用容器製造販売の阪神ホールディングスは、海外姉妹都市との交流や親善活動を通して技能実習生の受け入れ拡大を図り、社内体制の整備にも取り組んできた。現在は全従業員の14%に当たる112人の技能実習生を受け入れており、ベトナムの大学卒業生や国内留学生の採用にも積極的に取り組んでいる。

 このほかレポートでは、福岡県や愛媛県の留学生就職支援活動、香川県での高度外国人材の活用事例、沖縄県の観光業やIT産業における外国人材活用の取り組みなどを紹介している。

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