舞台芸術の祭典「シアター・オリンピックス」開幕 利賀、黒部で公演
国際的な舞台芸術の祭典「シアター・オリンピックス」が8月23日から1カ月間、南砺市利賀村と黒部市で開催されている。9回目を数える今回は、初となる日本とロシアの2カ国同時開催。国内では、南砺市の県利賀芸術公園と黒部市のYKK前沢ガーデン野外ステージ、宇奈月国際会館「セレネ」を会場に9月23日までの期間中、16の国と地域の演出家らが集い、30作品を上演する。

開幕式であいさつする𠮷田忠裕実行委員会委員長
開幕式は8月20日、東京・丸の内の東京會舘で約200人が出席して行われた。実行委員会委員長を務める𠮷田忠裕YKK取締役が「演劇のもつ力を感じ取っていただく準備が整った。つつがなく、大盛況に終わることを期待したい」とあいさつした。

芸術監督の鈴木忠志氏
シアター・オリンピックス国際委員日本代表で、利賀村を拠点に活動する劇団SCOT主宰の鈴木忠志氏は「ただ自国が素晴らしいというのではなく、国を超えて世界に貢献し、文化を発信することができないかとの思いから初の日露2カ国同時開催となった」と、ロシアのプーチン大統領にも共同開催を働き掛けた経緯を紹介。
ロシアで公演が行われるサンクトペテルブルクは人口500万人の都市である一方、利賀は人口500人と過疎化が進むが、劇団SCOTの40年以上にわたる活動で利賀が「演劇の聖地」と呼ばれるまでになったことに触れ、「人類に貢献する活動ができることを示すことが大切だ」と意気込みを語った。
また、ロシア側の芸術監督ヴァレリー・フォーキン氏(国立アレクサンドリンスキー劇場芸術総監督)は「世界を代表する演劇が2つの国に集まり、披露されることが世界を変えていくと確信している」と話した。実行委員会名誉会長の石井隆一知事、柴山昌彦文部科学相、パヴェル・ステパノフロシア文化省次官、宮腰光寛内閣府特命担当相、橘慶一郎復興副大臣らが祝辞を述べ、野上浩太郎官房副長官の発声で乾杯した。
シアター・オリンピックスは1994年、鈴木氏と世界各国の演出家、劇作家らが創設。「冷戦終結後も民族紛争が続くなか、民族や国家、文化、宗教の違いを超えていかに人類が共存していくか、芸術が果たす役割を追求しよう(鈴木氏)」との思いからスタートしたという。翌95年、ギリシアでの第1回開催を皮切りに数年おきに開催され、今回で9回目を数える。世界一流の演出家が集う舞台芸術の祭典として知られ、日本での開催は第2回の静岡以来、20年ぶりとなる。
今回会場の1つとなる南砺市利賀村は1976年、鈴木氏が劇団SCOTの前身となる早稲田小劇場の仲間を連れて東京から移転し、演劇活動を続けてきた拠点。毎年夏に演劇祭「サマー・シーズン」を開催するほか、鈴木氏による独特の俳優訓練法「鈴木メソッド」が高く評価されるなど、利賀は「演劇の聖地」として国内外に知られている。
8月23日、オープニング公演として、利賀会場の県利賀芸術公園ではシェークスピアの原作をもとにした鈴木氏の代表作「リア王」が、黒部会場のセレネでは声明と打楽器演奏が呼応しあう「羯諦羯諦」が上演された。ロシア・サンクトペテルブルクでの公演は6月15日から始まっており、12月15日まで続く。