裁判員制度創設の苦い思い出

 判決が分かりにくく国民から信頼されなくなった原因は裁判に国民が参加しないからではなく、あげて裁判官、弁護士が法の支配だの法治主義だのとあげつらい、国民の社会常識とかけ離れた独善的な公判運営を強めてきたことにある。

 法曹界が裁判員制度の導入をもって事足れりとして自らのあり方を見直す努力をしないならば、それこそ裁判員制度がもたらした悪影響というべきである。

 裁判員裁判となってから裁判のあり方が変わったことがあるとすれば、公判の迅速化が進んだことと量刑に変化がみられたことだろう。公判の迅速化は裁判員制度の導入を契機に公判前整理手続きが行われることになり、弁護士による公判引き延ばしがやりにくくなったことによるところが大きい。

 しかし、こんなことは裁判員制度の導入が無くともできることだったのに、裁判員制度が導入されることになってやっとできるようになったということの方が驚きだ。量刑に変化が生じているかどうかは仔細に分析してみる必要があるが、死刑廃止運動の影響により減少傾向がみられた死刑判決が裁判員制度導入後に増加するようになったようにも思える。これは死刑制度廃止を主張している日弁連にはショックなことだろう。

 日弁連は、国民には死刑制度存続論が大多数のため法律改正が困難であることから、裁判において死刑判決を無くすことにより実質的に死刑廃止を実現する方針といわれ、裁判員制度の導入により死刑判決を減らすことができると踏んでいたと思われるからである。

 私個人の推測だが、日弁連が裁判に国民の良識を反映させなければならないとして裁判員制度導入を推進した理由には、それにより弁護士による刑事被告人の弁護が有利になるという思惑もあったのではなかろうか。日弁連は、かねがね日本では起訴された被告が無罪になることが滅多にないことをとらえて日本の刑事裁判は遅れていると主張しているが、裁判に法律専門家でない裁判員が参加することになれば、弁護士の主張が受け入れやすくなると期待したとしても不思議ではない。

 これは法律専門家でない素人である裁判員は検事ではなく弁護士の主張を受け入れるに決まっているという思い込みといっていい。しかし、裁判員制度導入の結果、裁判も判決も大きく変わることはなく、日弁連の思惑通りにはなっていない。むしろ弁護士の無罪主張が退けられ、量刑も高くなっているものもみられる。

 このことは、多くの国民は従来の裁判に相応の信頼を寄せていたのであり、弁護士が難しい法律知識を駆使して何が何でも無罪を勝ち取ろうとすることにこそ、一般感覚に合わない難しい裁判という不信を感じていたことの表れということができる。日弁連が裁判員裁判の判決についてどのように評価しているのか聞いてみたいものだ。

 読売新聞記事では、裁判員を辞退する人が増加傾向にあり、昨年の辞退率は67%になったとし、これでは制度の土台も揺らぎかねないと警告している。これはもともと国民は裁判員制度に反対だったのだから当然予想されたことで、裁判員制度の導入は間違いだったのである。裁判員に選任されることによる一般生活に及ぼす影響は多大であり、選任されたことのある人の怨嗟の声は極めて高い。日弁連、裁判官などが都合のいいように裁判員制度は良い影響をもたらしたと評価するのは勝手だが、このことを無視しているのではないか。

 裁判員辞退の傾向がさらに増大していけば、ついには裁判員は人を裁いてみたいという一部の人に偏ることになる。それこそ公平な裁判の危機といえる。ところがこれを逆手にとって、裁判員辞退の原因は企業の無理解にあるとし、企業に対し裁判員期間の休暇付与、不利益取り扱いの禁止などを義務付けるべきという意見があるのは困ったことだ。国民はそんなことを望んでいるのではなく裁判員になりたくないだけなのだ。

 裁判員制度は施行10年を経過し、その実態も明らかになったのだから、早急に裁判員制度を廃止すべきである。このことを私自身の反省と悔悟の気持ちを込めて訴えたい。(興論サークルより) 

<付記>

 文中で日弁連の主張について、るる書いているが、個々の弁護士も同じ主張だったと考えているわけではないので誤解の無いようにお願いしたい。

 日弁連は法律に基づく団体で、強大な自治権を有しており、すべての弁護士は日弁連に所属しなければならないことになっている。しかし、日弁連としての活動は一部の左翼法律家の支配下にあるのが実態であり、日弁連会長経験者が朝鮮総連支援の中心であったり、共産党公認の都知事選候補になったりしていることが知られている。日弁連は左翼勢力の拠点といってよいが、個々の弁護士がそうだということではない。日弁連の主張、意見、見解も弁護士全体を代表するものとはいえないのだが、個々の弁護士はそれに反対できず、黙認せざるを得ないこととなっていると思っていた。

 

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