揺らぐサムスン共和国:インド市場も劣勢に苦しむサムスン電子

国士舘大学経営学部講師 石田 賢 

 現在サムスン電子は、韓国内のほか欧米、中国、インド、ベトナムなど6カ国でスマートフォン工場を稼働させているが、中国・天津工場(年平均3,600万台/従業員数2,800人)を昨年末の閉鎖決定後、ベトナムとインドに集約していく動きである。中国に残るもう一つの広東省・恵州工場(年平均7,200万台を生産)も人件費の上昇を主因として撤退するのは時間の問題とみられる。

 サムスン電子はインド・ノイダ(Noida)に約8,000億ウォンを投じて世界最大規模のスマートフォン工場を昨年7月に完成させた。現在の年産6,800万台から2020年には1億2,000万台のスマートフォンを生産する計画であり、ベトナムに次ぐ規模へと拡大する。

 インドにおけるサムスン電子の拠点は現在、生産工場2カ所、研究開発(R&D)センター5カ所、デザインセンター1カ所である。サムスン電子R&Dセンター3カ所(電装事業ハーマンの2カ所を除く)に勤める研究開発の人材だけでも8,000人を超える。

 市場調査会社カウンターポイントリサーチによれば、インドのスマートフォン市場規模は昨年1億5,000万台へと急成長しており、販売台数基準で前期比24%増、前年比5%増と拡大を続けている。規模において米国を抜き中国に続き世界で2番目に大きく、加えてインド市場は、ガラケーからスマートフォンへの代替需要も進行しているため、その重要性を増している。

 このインドのスマートフォン市場で最近までサムスン電子は1位を占めていたが、昨年第3四半期には、中低価格と品ぞろえを武器とした中国・シャオミに1位の座を奪われた。カウンターポイントリサーチが調査した2018年第3四半期インドスマートフォン市場占有率は、シャオミ27%、サムスン電子23% 、中国・VIVO10% 、印・マイクロマックス9% 、中国・OPPO8%の順となっている(図表①)。

図表①インドスマートフォン市場の企業別占有率
資料 : カウンターポイントリサーチ(2018.11)

 インドのスマートフォン市場においてシャオミなどの躍進が続いており、サムスン電子とシャオミとのシェア格差は開く傾向にある。さらに華為も今後3年間に1億ドルを投資して工場を新設し、2021年にシェアトップを狙っている。華為のほか、中国・OPPOやOnePlus(OPPO傘下のスマホメーカー)などもインドにおける研究開発機能を強化しており、インド市場の開拓に照準を合わせている。

 このようにサムスン電子は中国市場同様、インド市場においても、中国企業から圧迫される立場に追い込まれている。これはサムスン電子・インド法人(SIEL: Samsung India Electronics)の純利益にはっきりと影響が出ている。売上高は過去4年間、10兆ウォン前後で推移しているものの、純利益が減少傾向を続けており、2018年第3四半期の売上高純利益率は1.9%まで落ち込んでいる(図表②)。

 昨年1-9月の累積基準を2017年同期と比べてみると、売上高は1.7%の微増にとどまり、当期純利益はマイナス43.5%と激減している。これはノイダ最新工場の建設に伴う費用増加が一因となっているが、この低水準は成果主義を貫くサムスンにとって、もはや危険水域である。

図表② サムスン電子・インド法人(SIEL)の売上高・純利益の推移 (単位:ウォン)
資料 : 韓国金融監督院電子公示システム(2018.11.14)等より作成

 インド市場において新製品の開発や価格競争力をつけるために、サムスン電子はR&D人材の強化に乗り出している。2018年11月にインド工学系名門大学卒業者を中心に人材1,000人を採用し、今年1,000人、来年500人と3年間で2,500人を確保したい考えである。

 インドの研究開発拠点の強化を起爆剤として、コストパフォーマンスの良い中低価格(200ドル前後/台)のスマートフォンを投入することで、中国企業からトップの座を奪還できるかどうか、さらにR&D拠点として5GやAI(人工知能)など新事業への展開を加速できるかどうか、正念場を迎えている。

 いずれにしてもサムスン電子は、生産拠点を中国からインドとベトナムに移転し集約を図っていることから、両地域がグローバル生産の役割を担うことになるものの、インドには労働問題や複雑な関税・税制システムなどが足かせとなっており、またベトナムでは従業員の人件費上昇が目立ち、いつまで安い生産コストで競争優位を保てるか、不安材料も浮上しつつあるのが現実である。(東洋経済日報2019年1月25日掲載)

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