米中関係と東アジア 「新しい冷戦」の行方は?

政策研究大学院大学学長 田中 明彦

*人材問題分科会「米中関係と東アジア」(2018年12月12日)の講演要旨〔文責・編集部〕

 今の米中関係を考えるときトランプ大統領抜きにできない。大統領選挙での実際の投票数をみれば、ヒラリー・クリントン候補の方が多かった。にもかかわらず彼が大統領になれたのは、選挙人制度という不思議な仕組みにより、全体として相手候補より少ない支持率であっても選挙人を多く取れば当選できるからだ。

 よく言われるように中間層あるいはその下の層で、伝統的な製造業に勤めていた白人、特に男性の支持がトランプ氏に集まった。グローバル化と多様化の進む社会にあって、こうした動きに歯止めをかけたいという人々の意見を率直に代弁するということで、トランプ氏は支持を集めた。

 トランプ支持層からみると、グローバル化が進むことでウォールストリートのとてつもない大金持ちや中国人は儲かっているが、自分たちだけが不利益を被っている。トランプ氏は、世界の他の国々が豊かになってアメリカだけが損をしたという言い方でキャンペーンを張った。今もトランプ大統領の支持率は40~45%の間にあり、当選した当時から大きく落ちていない。

アメリカだけが損している?

 トランプ大統領は伝統的な米国であれば決して言わなかったようなことを次々話す。安全保障問題では、もうアメリカの予算を使って同盟国を守る必用はない、アメリカ軍を配備するならその費用は同盟国が払えと言う。北朝鮮の核兵器が怖いのなら、日本と韓国も核兵器をもてばいいとさえ言う。

 トランプ氏のいう不公平感はアメリカが世界中にもっている貿易赤字に現れている。貿易赤字は諸外国がアメリカ人の犠牲の上に金を稼いでいる証拠だとして、TPPから離脱すると言い、鉄鋼とアルミニウムの輸入に直ちに関税をかけた。地球温暖化対策の国際枠組み「 パリ協定」からの離脱も決めた。

 貿易にしても安全保障にしても、これまではアメリカが国際秩序をリードしてきた。それを大統領自らが否定するようなことをキャンペーン中ずっと言ってきたので、日本やヨーロッパ諸国の首脳は憂慮した。後から振り返ると賢明なやり方だったと思うが、日本の安倍首相はトランプ氏が大統領に当選した直後に面会を申し入れ、日米関係の重要性を縷々説明したという。

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