【新刊】『三毛作人生 出稼ぎ五十年』國枝信孝著

金融マンとして30年、その後、ゼネコンに4年、山林、酪農も経営するメーカーに16年在籍。企業人として第一次、第二次、第三次産業の異業種3つの世界を歩んだ、現ニッタ名誉顧問の國枝信孝氏の回顧録。

著者は1946年3月生まれのプレ団塊の世代である。大学卒業後、就職した三井銀行(現・三井住友銀行)で最初に配属されたのが外国営業部。1ドル360円時代の外貨両替業務での失敗談から始まり、外務省への出向や俗称MOF担を務め、また太陽神戸銀行との合併などに関わった。その後、ゼネコンの副社長に転じるも民事再生法適用申請に伴い、再生業務に携わった後、大阪の伝動用ゴムベルトの老舗、ニッタで社長を5年、2017年6月末に会長を退くまでの半世紀と自らの生い立ちを綴る。

とりわけ興味深いのは、それぞれのフィールドで体験した仕事と顛末、多彩な交遊はもとより、銀行から出向した外務省、旧大蔵省から金融部門が分離される以前の「銀行局」があった時代の、いわゆる「MOF担」での経験談である。MOF担には金融機関のエリートが配置され、いわば銀行の顔であった。端からは複雑さに満ちていると思っていたこの世界の片鱗を人模様とともにうかがい知ることができる。今ある銀行の週休二日制は、「これまでの人生でこのことが一番世の中の役に立っていると、密かに自信をもっている」筆者が、実現までこぎつけたその過程を淡々と記している。

転勤族の宿命とはいえ、これまでに住処は計24カ所を数えるという著者が72歳を迎えた2018年春、終の棲家に決めたのは夫婦のふるさと富山の地である。

著者は富山市生まれ。68年東京大学法学部卒業後、三井銀行入行。さくら銀行(現・三井住友銀行)取締役、冨士工副社長、ニッタ社長、会長を経て現在名誉顧問。とやまふるさと大使、日本タイ協会監事を務める。ユラナス企画編集、A5判・342頁。非売品。

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